山本尚さん

山本尚さん

 さまざまな有機化合物の反応を促進するルイス酸触媒などを研究してきた。「子ども時代から化学の実験が大好き」。自らの好奇心に導かれてさまざまな大学を渡り歩いた。現在はルイス酸触媒などを使い、複数のアミノ酸が連なった「ペプチド」の医療応用を目指している。


 兵庫県芦屋市で育った。小学生の頃には既に「実験」に夢中。手製のロケットを飛ばしたり花火を作ったりしたという。「いろいろ悪いことをしました。あまりお勧めはしませんけどね」。苦笑いを浮かべる。灘中・灘高と進んだが、そこでも化学研究部に入って実験ざんまいの日々を過ごした。「実験室にあった数千種類の試薬は全部覚えていた」と振り返る。高校時代で、英語で書かれた大学生向けの化学の教科書を読んでいた。


 高校卒業後は京都大に進むと決めていた。当時、有機化学で目覚ましい成果を挙げていた野崎一氏がいたからだ。1浪して入学が決まると、すぐに自宅へあいさつに行った。「明日から実験させてください」。意気込んで訴えると大笑いされた。「教養課程を学んでから来なさい」。はやる気持ちを抑えながら1~2年を過ごし、3年生で念願の野崎研究室に入った。


 しかしその頃ハーバード大の研究室から、後にノーベル化学賞を受賞する福井謙一氏の「フロンティア電子理論」を有機化学に応用した成果が報告された。「京大よりすごい大学があるのか。やっぱり世界一の大学で研究したい」。野崎氏に推薦を依頼し、自らハーバード大へ書類を送り京大卒業後に進学した。


 1972年に京大工学部の助手として戻り、ルイス酸触媒の研究に取り組んだ。ルイス酸触媒は、反応の対象となる物質から電子を奪う働きを持つ。この性質に着目し、有機化合物と組み合わせることで、アルドール反応などさまざまな化学反応を起こす手法を確立した。「試行錯誤を通して、物が変わっていく様子を見るのが面白かった」。米ハワイ大や名古屋大、米シカゴ大を経て2011年から愛知県の中部大で研究室を構えている。現在はルイス酸触媒などを使い、創薬に向けた「ペプチド」開発に力を注ぐ。


 国内外を問わずさまざまな場所で暮らしたが、京都へも深い愛着がある。「何よりも京都は飯がうまい。祇園祭の後のハモは最高だね」