今年の夏の終わりを僕はある一冊の小説とともに過ごした。どこにいく時もその小説を持っていったし、部屋にいる時でもリビングのソファやベッドサイド、時には浴室の中にも連れていった。

 それは、その小説が面白いとか、単純にとても長い作品であるということ以上に、僕がそれを読むことを何年もずっと楽しみにしていたからだ。僕はその小説との会話やその物語に触れているそのすべての時間を愛(いと)おしく感じていた。

 『心は孤独な狩人』はカーソン・マッカラーズの代表作として知られながらも、ここ何十年ものあいだ絶版の状態が続いていて、名作とされていながらも手に取ることができない作品として多くの文学ファンのあいだで憧れに近い存在になっていた小説だ。

 そもそもマッカラーズの作品は手に入りにくいものがほとんどで、何年か前に新訳が出た『結婚式のメンバー』で新しくファンになった僕のような人たちは、古本屋で真っ先に探すリストに彼女の作品のほとんどを入れなくてはならなくなったのだった。

 その中でも一番重要とされながら、一番手にしづらかった作品が夏の終わりに復刊したのだった。

 来週につづく。