秋分の日も過ぎて、朝夕はめっきり涼しくなった。コオロギやスズムシの音が秋の深まりを感じさせる季節である▼長浜市の神照寺でハギが見ごろと聞き、4連休の最終日に訪ねた。境内には、足利尊氏が弟の直義と和解のために訪れた際に植えたとも伝わる約1500株、2千本。多くが紅白の花をつけ、かれんな姿を見せている▼秋の七草の筆頭に掲げられるハギは日本人に古くから愛されてきた花だ。万葉集では160種類以上の植物が歌われているが、その中で最も多く詠まれ、当時人気のあったウメをもしのぐ▼植物学者の湯浅浩史さんによると、詠み人の名が不明な歌の方が多く、上流階級より庶民に好まれたとみられるという。秋の花見の対象でもあったそうだから、よほど日本人の感性に合う植物なのだろう▼寺の人から気になる話を聞いた。近年は葉が小さく緑も薄くなりがちで、いまひとつ見栄えがよくないと。他のハギ名所でもしばしば同様の傾向があるらしく、夏の猛暑と雨が少ないためではないかという。万葉一といわれる花も、気候変動と無縁でいられないということか▼<萩の風止まりし蜂を飛ばしけり>阿部みどり女。台風12号は東寄りに進路を変え、きょう関東沖を進むとみられる。穏やかな秋であってほしいと願うばかりだ。