こけら葺きの屋根が復活した万福寺の法堂(京都府宇治市)

こけら葺きの屋根が復活した万福寺の法堂(京都府宇治市)

法堂の屋根にサワラの薄板を敷き詰めていく大工(京都府文化財保護課提供)

法堂の屋根にサワラの薄板を敷き詰めていく大工(京都府文化財保護課提供)

 黄檗宗の大本山・万福寺(宇治市五ケ庄)で、宗祖・隠元の没後350年を1年半後に控え、江戸時代前期に創建された重要文化財の建物5棟の修理が進んでいる。万福寺は「先人が守り抜いてきた伽藍(がらん)を後世にもしっかり残したい」としている。

 昨年から修理が続いていた法堂(はっとう)。こけら葺(ぶ)きの真新しい屋根が、8月下旬に完成した。瓦葺きだった屋根にはサワラの薄板約21万枚が改めて敷き詰められ、創建当時の姿がよみがえった。

 2022年に隠元の没後350年の節目を迎える万福寺は「仏教や日本文化に新しい潮流をもたらした功績を改めてたたえたい」と、50年に一度の「大遠諱(おんき)」の準備を進める。その目玉事業として、同寺の重要文化財建物23棟のうち、老朽化が目立つ法堂など5棟の修理を18年から3年計画で開始。これだけ大掛かりな修理は約半世紀ぶりという。

 法堂は幅約22メートル、奥行き約20メートルと、同寺で最大級の建物。1662年に築造され、説法などに使われてきた。近年、100年ほど前に葺いた瓦屋根から雨漏りがするようになり、府文化財保護課が修復工事に掛かった。法堂の屋根は古文書や絵図から、創建当初はこけら葺きだったと分かった。明治前期に耐久性の高い瓦屋根に替えたとみられるが、「重い瓦屋根は建物を傷めてしまう」と同課。「隠元の教えに立ち返る大遠諱を機に、本来の姿に戻したい」という寺側の意向もあり、こけら葺きの復活を決めた。

 修理中の法堂からは、創建時の棟札や寄進者の名前を書いた古いこけら板が見つかった。同課の竹下弘展主査は「古い建築は歴史や文化に関する情報の宝箱。修理はそれを知るきっかけにもなる」と語る。万福寺は修理を終えた法堂をドローンで空撮し、動画を「ユーチューブ」に投稿するなど発信に努める。服部潤承執事(69)は「創建時から残る建物は、宗祖に思いをはせる一番のよすが」といい、「当初の姿がよみがえった法堂などを訪れ、隠元の功績や仏の教えを体感してほしい」と呼び掛ける。

 法堂以外にも、鐘楼や伽藍堂の壁と建具の修理などが今も続いており、全工事の完了は21年3月になる予定。総工費は約6億4千万円を見込み、うち7割を国が補助することになっていたところへ、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が考慮され補助率が8割に引き上げられることになった。それでも残る2割は寺の自己負担で、万福寺は「コロナ禍で寄付をお願いに出向くことも難しい」と苦慮。クラウドファンディングで資金提供の協力を募ることにしている。

【万福寺とは】 
1661年、インゲン豆や煎茶を日本に伝えた中国僧の隠元が開いた黄檗宗の大本山。創建時に中国の「明朝様式」で整備された建物がほぼ全て残り、中国風の精進料理「普茶料理」など独自の文化を伝える。