ニュージーランドの合宿が予定される琵琶湖畔。2000メートルの仮設コースの準備などが進んでいた(大津市・滋賀県立琵琶湖漕艇場)

ニュージーランドの合宿が予定される琵琶湖畔。2000メートルの仮設コースの準備などが進んでいた(大津市・滋賀県立琵琶湖漕艇場)

 予想外の事態に琵琶湖畔を拠点とするNPO法人「瀬田漕艇倶楽部」コーチの杉藤洋志(51)=滋賀県草津市=は絶句した。緊急事態宣言下の4月末。ボート強豪国ニュージーランド(NZ)の五輪事前合宿先に決まっていた大津市内のホテルが新型コロナウイルスのあおりで突然、廃業した。

 ボート日本代表だった杉藤の元に、NZ関係者から合宿の打診があったのは2年前。以降、産官を巻き込んで誘致に奔走した。琵琶湖からほど近いホテルを手配し、漁業者らと協議を重ねて国際基準の2000メートルコースを湖面に仮設できるお膳立てをした。都内に宿も確保するなど約60人規模の選手団を迎える準備を整え、今年、ホストタウンになっている大津市の相手国としてNZが追加登録された。

 誘致成功の決め手の一つだったホテルが閉鎖したことに、杉藤は「合宿が無しになっても仕方ない。そう覚悟した」と振り返る。だが、相手国を迎えることは文化交流に加え、日本の競技力向上にとっても千載一遇の機会となる。「彼らの練習を間近で見るだけでもレガシー(遺産)になる」。ポスト五輪を見据え、別の宿泊先を探すなど調整を続けている。


■感染対策負担に

 大会延期の余波が京都・滋賀のホストタウンに押し寄せている。東京や競技会場の地域以外に、地方が海外選手と触れ合い、五輪パラを身近に感じることができる制度だが、各自治体が工夫を凝らした各種計画は変更・延期を余儀なくされた。さらに、国の指針に基づく感染防止マニュアル策定という最重要課題がのしかかる。入国後の選手らに行動制限を設ける案が浮上し、選手団が移動するための専用車両を自前調達するなど、新たな財政負担を強いられる可能性も出てきた。「大会が開催されても(地方に)選手を招くことはできるのか」。関係者からは不安の声が漏れる。

■新しい交流模索

 先行きが不透明な中、大山崎町は相手国スイスのフェンシング代表が出場する試合チケットを町民に有償で譲り、応援の機運を高めようと企画。トルコのゴールボールと視覚障害者柔道のホストタウンである守山市は10月、市内の小学生と同国選手をインターネットでつなぐ取り組みを始める。来夏、選手団と対面できない事態も想定し、遠隔交流のテストを兼ねる。

 企画したのは、トルコ出身で同市のホストタウン交流推進員として働く藤田ウステュネル・ギュネシ(32)=大阪市。今夏の大会延期直前までイスラム教の戒律に沿う食事の手配や祝賀会の準備を進めてきた。「まだ達成感がないし、心残りがある。新しい交流の形があるはず。空白の1年で出来ることはやりたい」。母国と守山市の間に何を残せるのか、試行錯誤が続く。(敬称略)

【ホストタウン】東京五輪・パラリンピックに向け、海外の選手らと相互交流を図る自治体を政府が登録する制度。9月11日時点で、参加の可能性がある174カ国・地域に対し、全国の501自治体が登録されている。京都は舞鶴、亀岡、京丹後、大山崎、京丹波の3市2町、滋賀は、県と連名で登録している大津、彦根、甲賀、守山、米原の5市。守山、甲賀の両市はパラリンピアンとの交流に力点を置く「共生社会ホストタウン」にも登録されている。