「ドコモ口座」などを巡るゆうちょ銀行の貯金不正引き出しが、広がりを見せている。

 22日時点で約380件、計約6千万円にのぼっており、これとは別に約600口座で不審な取引が疑われているという。

 ゆうちょ銀は問題を把握しながら迅速に公表せず、対応が遅れて被害が拡大したと批判を浴びている。池田憲人社長らは不正引き出しがドコモ口座以外にもあったことを知りながら、15日に高市早苗総務相(当時)が指摘するまで明らかにしていなかった。

 不正引き出しに素早く対処した一部の地方銀行とは対照的だ。

 不正引き出しには2017年7月~19年末に申告された被害も約150件あるとされるが、補償は約50件しか済んでいないという。

 金融機関としての統治能力を疑わせる事態だ。顧客軽視と言われても仕方ないだろう。

 ゆうちょ銀は、最近の判明分とともに10月末までに補償を完了させるとしている。確実に作業を進めなければならない。

 電子決済サービスでなりすまし取引を防ぐ2段階認証を導入していなかった危機感の薄さに加え、社内の意思決定や情報共有の在り方なども十分に検証しなければ、信頼回復にはつながるまい。

 不手際はこれだけではない。自社のデビッド・プリペイドカード「mijica(ミヂカ)」でも送金機能が悪用され332万円が引き出されていた。

 8月上旬に最初の不正が確認されたのに、送金の限度額引き下げなどの対策にとどめて利用停止に踏み切らなかったため、9月になって被害が広がった。

 インターネット証券大手SBI証券の顧客資産9229万円が、不正に開設されたゆうちょ銀口座を経て流出する問題も起きた。

 他の決済システムへの影響が広がっている。全国に多くの顧客を抱えるだけに、安心して利用できるような改善策が不可欠だ。

 池田社長らは記者会見で、電子決済サービス登録している550万人の顧客に被害の有無を確認するよう要請した。顧客の自己防衛に委ねるのは金融機関の役割を放棄しているようにみえる。

 日本郵政グループでは、保険不正販売で日本郵便やかんぽ生命保険が職員の大量懲戒処分に追い込まれた。今回のゆうちょ銀の対応も、顧客の財産に対する責任感の欠如という点で共通する。

 再発防止に取り組み、組織としてのけじめも考えねばなるまい。