菅義偉首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が初めて電話会談した。

 日韓首脳の協議は2019年12月に安倍晋三前首相と文氏が中国で日中韓首脳会談に合わせて会談して以来、9カ月ぶりだ。

 関係悪化の要因となった元徴用工訴訟問題で進展はなかったが、日韓の連携の重要性を確認し、コロナ禍で制限しているビジネス人材の往来再開に向け協力していくことなどで一致した。

 日韓は互いに「重要な隣国」と認識しながら、慰安婦問題や元徴用工訴訟をめぐって戦後最悪といわれるほど冷え込み、貿易や安全保障、さらには国民感情にも悪影響を及ぼしている。

 そんな異常な関係をいつまでも放置してはならない。その意味で電話会談が菅首相の就任まもなく実現したことは評価できる。行き詰まった両国関係の打開に向け、首脳間の対話を広げていく契機にするべきだろう。

 元徴用工訴訟問題について菅首相は、両国関係が非常に厳しい状況にあるとの認識を示し、韓国側に関係を戻すきっかけをつくるよう求めた。

 安倍前首相と同様、1965年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済みとする立場を崩さず、「韓国の責任」で事態を収拾するよう促した形だ。

 これに対し文氏は日韓の立場の違いを認めつつ、両政府と全ての当事者が受け入れられる「最適解を一緒に探していくことを願う」と語り、日本側に配慮する姿勢ものぞかせた。

 韓国政権はもともと元徴用工問題は請求権協定で解決済みという立場だった。ところが文政権になり、韓国最高裁が賠償請求を認める判決を出すと三権分立を盾に追認した。これでは国家間の信頼は成り立たない。

 文政権の与党「共に民主党」の李洛淵(イナギョン)代表によると、日韓双方はこれまでの水面下協議で元徴用工問題に関する3~4の解決策を議論したが、実らなかったという。

 今回の電話対談は菅首相就任の祝意を示すため韓国側が申し入れた。

 首相交代を機に協議を仕切り直し、行き詰まりを打開したいという文政権の姿勢の表れとみることもできよう。

 日本政府も前向きに受けとめ、一歩踏み込んだ形で事態打開の道を探れないか。

 徴用工訴訟で差し押さえられた日本企業の資産が現金化され賠償支払いに充てられれば、対立は決定的となる。知恵を絞りたい。