赤ちゃんにミルクをあげ終えた谷孝さん。慣れない作業で額に浮かぶ汗を、妻の優子さんが拭いてくれた(京都市中京区の自宅で)

赤ちゃんにミルクをあげ終えた谷孝さん。慣れない作業で額に浮かぶ汗を、妻の優子さんが拭いてくれた(京都市中京区の自宅で)

 平成の30年間で、人々の働く風景は大きく変わった。女性の進出が進む一方、猛烈社員は時代遅れとみなされるようになった。時間や場所にとらわれない柔軟な働き方も広がり、副業にも理解を示す企業が現れている。

 一方で、子育ては女性が担うものという偏見は依然として根強い。家庭では家事や育児を1人でこなす「ワンオペ育児」を押しつけられ、職場では時短勤務の代わりに職種が限られたり、昇進が遅れたりする「マミートラック」(母親向けの職業コース)に陥ってしまうケースも多い。

 NPO法人「子育て支援コミュニティおふぃすパワーアップ」(京都市中京区)代表の丸橋泰子さん(63)は、育児休業明けで職場に復帰したものの、周囲の理解を得られずに夜間保育に子どもを預けて残業を続けた女性の相談を受けたことがある。「復帰したのに結局、辞めてしまうママさんは少なくない」と嘆く。

 子連れ出勤を認めたウエダ本社(下京区)社長の岡村充泰さん(55)は「働く時間が長いほど、より多くの仕事をしている」とみなす考え方を否定する。「『労働の価値=時間』という考えに限界がきている。働き方改革というが、時間軸の呪縛を崩さなければ変われない」と訴え、同時に固定化した働く場所や形にも疑問を投げ掛ける。

 そんな考えを後押しする兆しは見えている。定着までは道半ばだが、職場に出勤せず情報通信機器を利用して仕事をする「テレワーク」や、机や事務所を他人と共有する「シェアオフィス」などが従来の常識を変えようとしている。

 「社外の人脈を広げたり、スキルアップしたりして、人生を豊かにしてほしい」。育児休業を取っているフューチャースピリッツ(下京区)社長の谷孝(たにたか)大さん(41)は、就業時間のうち月20時間までを副業などに使える「働かない制度」を2016年からスタートさせた。約90人の社員のうち、30人ほどが利用する。手作りアクセサリーのオンラインショップ運営をはじめ、趣味の銅版画制作や大学で学んだりして自分を磨く。

 新入社員の宮田有紗さん(22)は、制度を使ってフィギュアスケーターとして活動し、休日には副業で講師を務める。「入社面接で『フィギュアを続けてください』と言ってもらえた。生活にメリハリができて、仕事でもプライベートでも活気が出てきた」と笑う。

 谷孝さんは「これはダメとか周りに合わせないといけないとかではなく、一人一人の事情に合わせて自由に働ける世の中が来る」と未来像を描いている。