路上観察などで知られた前衛芸術家で芥川賞作家の故赤瀬川原平さんは小中高校を通して一度も修学旅行に行ったことがなかった。著書「京都、オトナの修学旅行」で明かしている▼赤瀬川さん流に言えば、卒業を前に児童生徒で旅行する風習。経験しなかった理由を小学生はおねしょ、中学生は貧乏、高校生は反抗心だったと書く▼修学旅行の実施の判断が京都府内の各自治体で分かれている。収束しない新型コロナウイルスの影響のためだ。長期の休校や短縮の夏休みと異例ずくめの学校生活に修学旅行も加わる▼自治体の半分近くが小中学校どちらかで宿泊を伴う修学旅行をとりやめた。亀岡市や長岡京市、精華町は小中両方とも中止だが、日帰り旅行に変更するケースもある▼中止を決めた教育委員会は「保護者の不安」「食事や入浴、各部屋の時間など密が不可避」との理由を挙げ、実施する教委は「思い出づくりは必要」とする。いずれも苦渋の選択だろう▼赤瀬川さんは先の著書で修学旅行は大人になってからがお勧めと説く。人生で経験を重ねると、寺社や美術品の味わいを感じられるようになるからだと。修学旅行が中止になった児童生徒はこの経験を乗り越えたい。将来きっと「オトナの修学旅行」を赤瀬川さんのように楽しむことができる。