菅義偉氏が首相に就任してから、10日余りが経過した。

 共同通信社が、菅内閣の発足直後に実施した緊急電話世論調査で支持率は66・4%、回答者のほぼ3分の2に達した。

 調査手法が異なるため、単純には比べられないが、2000年以降では86・3%の小泉純一郎内閣、72・0%の鳩山由紀夫内閣に次ぐ高さだ。

 12年、安倍晋三内閣発足時の62・0%を上回っている。

 長期にわたった安倍政権のひずみが顕著となる中、首相が代わり、人心を一新したかのような印象が、広がったのかもしれない。新内閣が発足したので、「ご祝儀相場」の意味合いもあるだろう。

 同じ調査で、自民党の支持率は47・8%となり、前月より約15ポイントも上昇した。

 政権トップの人気が高く、与党にも追い風が吹いている。ならば「今のうちに」と、自民党内で早期の衆院解散を求める声が、日に日に高まるのは無理からぬことだ。

 衆院議員の任期は、来年10月21日までである。残り約1年となって、解散のタイミングは限られている。来月下旬に召集されそうな臨時国会の会期中に解散するのが、最も早いとみられる。

 その場合、菅首相の所信表明演説と各党の代表質問を終えてからとなりそうで、衆院選は11月下旬に行われる可能性があるとされる。

 とはいえ、自民党の議員にとって都合がよいという理由だけで、解散するのは、いかがなものか。

 今回と似たケースは、過去にもあった。

 前任者の辞任を受けて、08年に首相となった麻生太郎副総理兼財務相は、支持率が高めとなる就任直後の解散を、一部から期待されていた。当時も衆院議員の任期満了が、1年後に控えていた。

 ところが、その頃起きた金融危機リーマン・ショックへの対応に当たるとして、解散の先送りを選択した。実績づくりを優先すべきだと、これを進言したのは、党選対副委員長だった菅氏らである。

 この考え方に沿うならば、新型コロナウイルス感染が収まらない中で、政治の空白が生じかねない早期解散には、踏み切れないはずだ。

 ただ、先送りした結果、麻生氏は翌年、支持率が低いのに解散に追い込まれた。自民党は大敗し、民主党に政権を奪われてしまった。

 これが、菅氏の念頭にもあるのだろう。会見では、「せっかくだから仕事をしたい」「コロナの収束と経済の立て直しが大事」としつつも、解散については「なかなか悩ましい問題だ」と、含みを残している。

 次の衆院選に勝てば、無派閥で党内基盤が強固とはいえない菅氏への求心力は、さらに増すことになる。しかし、政局をにらんで早期解散を仕掛けたと見透かされれば、すぐに世論の離反を招くのではないか。

 いずれにせよ、国民に信を問うのなら、それに足る大義を掲げるよう、強く求めたい。