新政権の肝いり政策として、菅義偉首相が持論とする携帯電話料金の引き下げを目指して動きだしている。

 菅氏は就任会見で、携帯大手3社が寡占状態を長年維持して「世界でも高い料金で、20%もの営業利益をあげ続けている」と改革の必要性を強調した。

 早速、値下げに向けた検討を進めるよう指示された武田良太総務相は「1割とかいう程度では改革にならない」と大幅引き下げに意欲を示した。

 多くの国民に身近で、関心や期待の高いテーマであるのは疑いない。だが、政権が本来自由な民間サービス料金をやり玉に挙げ、こと細かく指図するような介入には違和感を覚える。

 価格競争を滞らせる目詰まり箇所はどこか、顧客の利益につながるサービスやインフラ、市場環境の在り方を含め点検し、開かれた議論が必要だろう。

 携帯料金を巡っては、菅氏が官房長官時代の2018年に「4割程度下げる余地がある」と発言。大手3社に値下げを促す圧力をかけ続けてきた。

 昨年10月に通信料金と端末代金の分離を義務付けたほか、2年縛りの契約違約金を9500円から千円以下に引き下げる制度改正を実施した。

 だが、めぼしい成果は出ておらず、世界的にみて割高な水準が続いているとされる。

 大手の通信料金は大容量プランで3割近く下がったが、家族契約など条件付きだ。家計調査では、2人以上世帯の携帯電話通信料は今年6月に1万1371円で、1年前の9812円よりむしろ負担が増している。

 「第4の携帯」として市場活性化が期待された楽天の参入も遅れた。今年4月に通信エリアに課題を残したままサービスを始めたが、本格的な競争相手となるには時間がかかりそうだ。

 菅氏が携帯料金にこだわるのは、新政権が掲げる既得権益の打破を国民に分かりやすくアピールできるという思惑があるとみられる。家計の負担軽減を実感しやすく、他の消費喚起につながるとの期待もあるだろう。

 ただ、菅氏は就任直前、値下げが実現しない場合、携帯会社が払う電波利用料を引き上げる可能性を示唆した。電波を割り当てる国の立場を使った「脅し」であり、強権的すぎないか。逆にコスト増加分が携帯料金に上乗せされないだろうか。

 一方、携帯大手は料金が割高との指摘に対し、海外と比べてつながりやすさなど品質の良さがあると説明する。格安スマホ事業者も参入したが、大手のサービスや安心感を評価する消費者が多いのも事実だ。

 また大手は、収益の確保が第5世代(5G)移動通信システムへの巨額投資のため必要と主張する。政府も成長戦略の柱に5G普及促進を掲げ、設備投資への大幅減税を行っている。どう整合性を図るかも問われよう。

 携帯・スマホは生活や産業、防災にも不可欠なインフラだ。国が健全な競争環境を整え、携帯各社は利用者にとって魅力的で納得性の高いサービス・料金を競い合うことが望ましい。