「停車が決まると街頭でビラを配り、地元は大盛り上がり。これを機に住宅開発に拍車がかかった」。署名運動に関わった草津市都市計画部の松尾俊彦副部長は振り返る。南草津駅は、開業20年の14年度に県内のJR駅で乗客数トップに躍り出て以降、今も首位を維持している。

 「ここ10年で駅の周辺は急速に発展した。開業当初は何もなく、琵琶湖対岸の花火が見えた」。南草津駅がある同市野路町の町内会長、中野宗城さん(69)は懐かしむ。池と田畑だった一帯には大型マンションが林立し、宅地造成が続く。

 不動産経済研究所の笹原雪恵・大阪事務所長は「新快速は京都、大阪の通勤圏を拡大させた。今やマンション開発は東は近江八幡、西は明石まで及んでいる」と指摘。「停車駅は都市部へのアクセスだけでなく、周辺に店やクリニックが集まる駅自体の魅力も大きい」とし、新型コロナウイルス感染症禍でも駅周辺の住宅需要は底堅いと分析する。

 一方で新快速の運転開始から半世紀たち、時代は人口減少に転じた。沿線地域の高齢化も徐々に進む。人口増が続く草津市も将来を見据え、市内にある草津と南草津の両駅を中心に、商業施設や医業機関などの都市機能を集中させるコンパクトシティー化を急ぐ。

 沿線のまちづくりにも大きな影響を与えてきた新快速。だが、節目に見舞われたコロナ禍で人の移動が止まり、大量・高速の旅客輸送という半世紀の間追い求めてきた価値観が揺らいでいる。「縮む社会」や「新しい生活様式」にどう対応するのか。JR西の看板列車は、岐路を迎えている。