官僚主義はしばしば笑えぬエピソードを生む。ある県で、二つの中央省庁から補助金を得て建築する施設が、両省庁の基準をたてに玄関や事務室を二つずつ設けるよう求められた▼別の県では、保健福祉分野の情報システムづくりで旧厚生省の部局ごとに補助が行われ、一つの役所で7系統のシステムが必要になった-。四半世紀前、省庁ごとの縄張りは文字通り自治体を縛っていた▼その後の分権改革で、そこまでの非効率はなくなったにせよ、菅義偉政権は、なお残る省庁の縄張り主義を問題視しているようだ。縦割り行政打破を掲げ、設けたホットラインには多くの情報が寄せられている▼分権改革の過程では、省庁の権限が自治体業務への支障となっている事例を全国知事会などが丹念に調べ、政治家や世論に訴えた。ホットラインの情報も、うまく生かせば縦割りを突き破る推進力となろう▼ただ、いまの省庁は前政権からの「官邸主導」になびき、意見を言うことすら控えているようにみえる。官邸の縄張り肥大化が省庁を縛ってはいないか▼菅首相の「反対するなら異動してもらう」との発言も霞が関に戸惑いを広げているようだ。縦割り打破への強い決意のつもりが忖度(そんたく)官僚をさらに増やすことになっては、官邸主義の笑えぬエピソードとなろう。