新型コロナウイルスの感染拡大が状況を一変させた。

 国土交通省が発表した7月1日時点の基準地価は、全用途の全国平均が前年比マイナス0・6%となった。3年ぶりに下落し、マイナス地点は全体の60%に及んだ。

 1月時点の公示地価では東京、大阪、名古屋の三大都市圏以外の地方圏でも28年ぶりに上昇し、回復の広がりが鮮明になっていた。

 わずか半年での急変は、コロナ禍が不動産取引を凍り付かせ、インバウンド(訪日外国人)の激減でホテルや店舗の需要が失速したためにほかなるまい。

 影響は長期化しかねず、持ち直してきた地価が再び下落局面に入る「潮目の変化」への対応力が問われよう。

 コロナ禍による客足減が直撃したのが商業地で、マイナス0・3%と5年ぶりに下落した。

 三大都市圏はプラスだが、上げ幅は前年の5・2%から0・7%に縮小。地方圏でみると昨年7月~今年1月は0・8%上昇したが、以降は0・9%下落した。感染拡大が響いたのは明らかだ。

 急増した訪日客の需要を取り込んできた地域ほど失速が目立つ。

 京都市では、上昇率が全体で前年の11・5%から1・4%に、全国6位の41・9%だった東山区・八坂神社近くも4・5%となり、同区内で下落地点も出た。

 「お宿バブル」と呼ばれ、地価を押し上げた開発ラッシュに強烈な冷や水が浴びせられた形だ。

 客足の落ち込みが長引き、経営不振に陥った宿泊施設や店舗などの閉鎖や休業、賃料引き下げの動きが地価を押し下げる圧力となっている。不動産投資の慎重化と相まって開発計画が延期、凍結される懸念もある。

 京都市は今月から、宿泊施設を住宅に転用する改修費への助成を始めた。休眠や塩漬けの物件増加による地域の空洞化を防ぐ取り組みとして注目されよう。

 一方、地方でも、熊本市中心部をはじめ再開発や道路整備で利便性が高まり、大幅に地価が上昇している地域もある。

 コロナ対策でテレワークが広がり、一極集中が続いてきた東京圏が7月以降、他の道府県への人口流出「超過」となる新たな状況も生まれている。

 インバウンド拡大がけん引してきた地価回復だが、住民目線では「観光公害」や物件高騰による若者の流出などの弊害も指摘されてきた。コロナ禍を契機に、改めて便利で快適なまちづくりの在り方を見直してはどうだろうか。