モーツァルトのオペラ「魔笛」の一場面、愉快な鳥刺し男パパゲーノが恋に身を焦がし死のうとすると、3人の童子が現れて歌う。♪やめろよ、パパゲーノ。人生は1度だけ、2度とはないよ…▼自殺を思いとどまらせることを「パパゲーノ効果」と呼ぶそうだ。逆に自殺を誘発するのは、ゲーテの小説から「ウェルテル効果」という。いずれも自殺報道が問われる時に使われる言葉だ▼小欄も戸惑っている。明るい印象の人気俳優、竹内結子さんが亡くなった。自殺とみられる。今春からプロレスラー木村花さん、俳優の三浦春馬さん、芦名星さん、藤木孝さん、と有名人の自殺とみられる死が相次いでいる▼こんな時、心配になるのが連鎖の広がりだ。コロナ禍の不安が漂ってもいる。悩みを抱える人を独りぼっちにしないで、静かに話を聞くことが大切ではないだろうか▼世界保健機関(WHO)はメディア向けに手引を示し、多くの報道機関がガイドラインを作っている。センセーショナルを戒め、自殺の手段や現場の詳細情報も控えている。一方で自殺対策や支援・相談先の情報を提供する。パパゲーノ効果は報道に対する研究調査で立証されているそうだ▼3人の童子のように美しい声で歌えなくても、できることはある。悩める人のそばにいるとか。