岐阜県境に近い滋賀県長浜市木之本町金居原の山中に、かつて鉱山の町があった。銅鉱石が採掘され、1965年に閉山した土倉鉱山。人の手を離れた山奥にはトチノキの巨木林も残り、近年は散策ツアーが行われる。閉山から半世紀を経た産業遺産と豊かな自然が、新たな地域資源として価値を見直されている。
鉱山は杉野川上流で明治末期に採掘が始まった。昭和30年代には人口が千人を数え、住宅や商店、映画館が並んだ。しかし、海外から安価な銅が輸入され、採算が合わなくなり閉山した。
今でも朽ち果てた選鉱場跡が山の斜面に残り、緑に包まれる。朽ちた人工物の隙間から木々が生える。その姿が人気アニメ映画「天空の城ラピュタ」の舞台を思わせると、インターネット上では「滋賀のラピュタ」とも呼ばれる。
伊吹山地の横山岳と土蔵岳のはざまに位置する杉野川源流部の森にはトチノキやサワグルミの巨木が並ぶほか、さまざまな草も生え、豊かな植生をとどめる。
こうした環境に目を向け、市内で森林保全や林業就労支援に取り組む「ながはま森林マッチングセンター」は2018年から散策ツアーを行う。今年5月からはメンバーを限定したフィールドワークの連続講座や木工のワークショップも開き、活動の幅を広げる。
同センターの森林環境保全員橋本勘さん(44)は「閉山から50年以上たち、産業遺産と自然が調和してきて、ほかにはない魅力がある」と話す。一帯では今年新たに確認された巨木林もあるといい、そこを巡るツアーも計画している。