結果的に総長として最後となった記者会見に臨む山極氏(2019年2月、京都市左京区・京都大)

結果的に総長として最後となった記者会見に臨む山極氏(2019年2月、京都市左京区・京都大)

 京都大の山極寿一総長が30日、6年間の任期を終えて退任した。歴代の総長が行ってきた退任会見は開かない異例の対応で、京大ホームページに所感を文書で掲載。「多彩な人が共存する中で新しい発想が紡ぎ出される大学にしたかった」とし、新型コロナウイルスの感染が広がっている現状でも「対話」を大切にする京大の本質は「一切変わっていない」と強調した。

 京大は退任会見を行わない理由について、新型コロナの感染防止を挙げる。ただ京大は学生で感染者が出た場合など複数の記者会見を今年も実施し、新たに総長に就任する湊長博氏も10月2日に京大で会見する。

 山極氏は京大を「社会や世界に開く窓」とするWINDOW構想を掲げて、2014年10月に就任。在任中は学生の自由な発想によるプロジェクトを支援したり、産学連携を推進する子会社「京大オリジナル」を設立したりした。

 一方、京都市左京区の吉田キャンパスの名物だった「立て看板」を巡り市から指導を受け、大幅に設置を規制する規定を18年5月から実施。規定実施に至る過程で十分な対話がないとして一部の学生や教員から批判を受けた。

 また19年4月には、学生寮「吉田寮」の旧棟が老朽化しているとして寮生らに立ち退きを求めて京都地裁へ提訴。学生を相手に初めて京大が民事訴訟に踏み切る事態となった。

■「対話重視」強調も…

 「伝統である『自由の学風』を生かし対話を重視する」。総長就任が決まった2014年7月に京都市左京区の京都大であった会見でも、山極寿一氏は力強く語った。しかしその言葉とは裏腹に、在任中に十分な「対話」があったとは言い難い。

 立て看板撤去を巡っては、新たな規定を実施した直後の18年6月の記者会見で「市からの指導については学生と対話できるわけがない」と強調。また吉田寮生らの退去が問題となっていた19年2月の会見では寮生らと「話し合う価値はある」と述べたものの約3カ月後、京大は提訴した。

 14年10月の就任以来、2~6カ月ごとに開催されてきた記者会見も、吉田寮問題について発言した19年2月が最後となった。

 定例会見が中断した理由について京大は「日本学術会議会長などを兼ねていたため日程確保が難しかった」などと説明している。しかし今年9月末で任期が終わった日本学術会議会長の退任会見は、同24日に東京都港区で対面形式で実施した。

 ゴリラ研究で名高く「名物総長」となることを期待された山極氏だが、さまざまな困難な課題に直面するなか最後まで言行の不一致を印象付ける形になった。