菅義偉首相が意欲を示す携帯電話料金の引き下げに向けて、一歩踏み出すのだろうか。

 NTTが、上場子会社のNTTドコモを完全子会社化するため、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。

 最大で4兆3千億円も必要とされる資金は、大手銀行などから調達する。国内企業へのTOBでは、最大規模となる。

 巨額のTOBは、収益の圧迫にもつながるが、それをはねのけるだけの事業展開を今後、見込んでいると考えられよう。

 発表では、第5世代(5G)移動通信システム分野の開発や、格安スマートフォン業者との競争激化などに対応するには、一体的な経営と迅速な決断が不可欠で、完全子会社化が最善の方途であるとしている。

 ドコモは、1992年に移動通信事業の担い手として、NTTから分離された後、東京証券取引所第1部への上場を果たし、グループの稼ぎ頭となっている。

 しかし、近年は割安なスマホのブランドに顧客を奪われ、本業のもうけを表す営業利益などの指標が、ライバルのKDDI(au)やソフトバンクと比べて、明らかに見劣りする。

 完全子会社化によって、こうした状況を改善し、国内ではキャッシュレス決済などの消費者向けサービス、国外への通信システムの輸出に注力できれば、欧米や中国の事業者にも対抗できる。

 新たな展望を開くのに、グループの再編は、避けて通れない。

 ただ、そのうえで具体的に何をするのか、市場には示しておくべきだ。

 NTTが、ドコモの稼ぐ収益を全て取り込むことになれば、親会社主導で携帯電話料金を引き下げる経営余力が生じるという。

 ドコモが料金引き下げに踏み切れば、他社も追随するのは明らかだ。結果的に、首相の思惑通りとなりそうだ。

 とはいえ、ドコモの分離には、NTTの肥大化を阻み、業者間の公正な競争を促す目的があったことを忘れてはなるまい。

 今回の完全子会社化について、ソフトバンクが「電気通信市場における公正競争確保の観点から検証されるべきだ」とのコメントを出すなど、業界は警戒感を強めている。

 NTTは、政府が筆頭株主の持ち株会社である。過度な政治の介入で、市場をゆがめることが、あってはならない。