共謀罪、政権に有益な助言してあげたのだが

 ―先生を含めて6人が任命されなかった。

 これがどれだけ重大な問題であるのか、あまり分かっていないのではないか。まず、一般公務員の任命と同じだと思ってるようなところがある。菅さんは首相就任の時、「言うことを聞かない者はクビにする」というようなことを言った。学術会議の会員というのは建前上公務員ではあるが、選考基準がはっきり決まっているので、任命権者だからといって自由にクビにするとか任命しないとか、できるわけがない。なぜできないかというと、憲法23条の学問の自由を保障する必要があるからだ。

 ―政権側は、先生を任命しなかった理由についてコメントを避けているが、ご自身はなぜ外されたと考えるか。心当たりは。

 個人的な話をすれば、共謀罪の時に「あんなものをつくっては駄目だよ」と、参議院の法務委員会に参考人で呼ばれたので言ったことがある。治安立法として最悪だということよりも、「そんなものをつくっても多分使えない」と言ったのだ。つくるだけ無駄なもののために政治的空白を大きくするのは、本当に無駄。こんなところにエネルギーを注いだらいけないと言ったのだ。結果、できて3年だが、一度も使われたことがない。政権にとって有益な助言をしてあげたと思っていたのだが、向こうはそう思っていなかったようだ。

 しかし、私個人の問題ではなくて、むしろ学術会議や大学を言うがままに支配したいということの表れだと思っている。何が問題かと言うと、防衛省が多額の研究助成予算で持っている。ところが大学や学術会議は、3年前に確認したが軍事研究はやらないということを言って、あまり応募していない。その代わりに普通の研究経費を上げろと言っているのだが、政府は言うことを聞かない。政府にとってみたら、軍事研究をしろと言っているのに言うことを聞かないのが学者だと思っているはず。ここが多分、本当の問題だと思う。

「任命拒否できる権限」は間違い

 ―官房長官会見では学問の自由については「法律上、内閣総理大臣の所轄であり、会員の人事を通じて一定の監督権を行使するのは法律上可能。その範囲内で行っているので、ただちに学問の自由の侵害にはつながらない」としている。

 学問を監督しようと言っているが、それが自由の侵害ではないか。もう一つ言うと、ほとんど同じ構造をもっている条文が憲法6条1項にある。天皇の国事行為だ。「天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する」とある。日本学術会議法では「学術会議の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」。主語と述語は入れ替わるが、同じ構造だ。ということは官房長官の言い方だと、国会が指名した人物について天皇が「この者は駄目だから任命しない」と言えることになる。同じ理屈だ。つまり任命権があることを、「任命が拒否できる権限もある」というふうに思うのは間違いなのだ。