松宮孝明教授(2017年撮影)

松宮孝明教授(2017年撮影)

 学術の立場から政府に提言する首相所轄の政府機関「日本学術会議」の新会員について、学術会議が推薦した候補105人のうち6人を菅義偉首相が任命しなかったことが1日、分かった。現行の推薦制度になった2004年以来、推薦した候補者が任命されなかったのは初めて。憲法が保障する学問の自由を侵し学術会議の存立に関わるとして批判の声が上がっている。

 関係者によると、任命されなかったのは立命館大の松宮孝明教授(刑事法学)や京都大の芦名定道教授(キリスト教学)、東京大の加藤陽子教授(歴史学)ら人文・社会科学系の研究者6人。

 加藤勝信官房長官は同日の会見で候補者の選考過程や理由について「人事に関すること」と言及を避ける一方「専門領域の業績にとらわれず、広い視野に立って総合的、俯瞰的観点から学術会議の活動をしていただきたい。そういう観点から任命した」と述べた。

 会員は日本学術会議法により同会議の推薦に基づいて首相が任命する。10月1日改選の今回は、7月の臨時総会で全会員の半数に当たる105人が候補者に選ばれ、8月末に首相に推薦書を提出した。9月28日に政府から内示があり、6人だけ外れていたという。

 同法には職務の独立性を記した条項があり、9月末で退いた山極寿一前会長(京都大前総長)は1日の総会で「(1949年の)創立以来自立的な立場を取っている。説明もなく会員の任用が拒否される事態は会議の存立に大きな影響を与える」と懸念を示した。

 学問の自由への侵害との指摘について加藤官房長官は「会員の人事等を通じて一定の監督権を行使することは法律上可能だ」と述べ、侵害にはつながらないとした。

 松宮氏は2017年に「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の成立を批判。松宮氏ら3人の法学者は1日、任命拒否の撤回に総力を挙げるよう連名で梶田隆章新会長に要請した。