ガードナー賞受賞決定を受け、これまでの研究を振り返る竹市氏(神戸市中央区)

ガードナー賞受賞決定を受け、これまでの研究を振り返る竹市氏(神戸市中央区)

 細胞同士をくっつける「のり」の役割を持つタンパク質「カドヘリン」を発見した功績により、京都大名誉教授で理化学研究所名誉研究員の竹市雅俊氏(76)が今年のガードナー賞を受賞することが決まった。医学的に重要な研究成果を上げた科学者をたたえる同賞は、過去にiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製した山中伸弥・京大教授も受賞するなど世界的な権威だ。竹市氏に受賞の思いやこれまでの研究を振り返ってもらった。

-受賞をどう受け止める。
 「地味な研究を国際賞という形で評価いただけるのはありがたい。受賞を通じて、自分たちの研究を一般の方々と共有させていただく機会が増える」


-科学への純粋な好奇心から研究を続けてきた。
 「僕が生まれ育った名古屋市は、当時はたくさんの山林があった。野鳥を観察したり昆虫採集をしたりするのが好きだった。その延長で、生物学をしようと名古屋大理学部生物学科へ進んだ。入学してからは生物の発生学を研究した」


 -なぜ発生学を。
 「生物学といっても遺伝学や生態学などいろいろな分野がある。僕自身は、理論的に考えるというより生物を観察するのが得意だった。当時の発生学は、動物が受精卵から個体になっていく過程を観察し実験する学問だ。観察力という自分の資質を生かせると思った」


 -名大の大学院から京都大理学部の故岡田節人(ときんど)教授の下に移った。
 「名大の大学院で指導してくださった江口吾朗先生が、助教授として岡田先生に招かれた。僕は付いていく形で岡田研究室に入った。岡田先生は独創的な研究者だった。例えば発生学についても『相関』や『構築』といった概念的な捉え方で教科書を書かれた。非常に知的で前衛的とも言える方だった。一方で、共通の趣味だった虫捕りにもよく行った。時には平日でも誘われた。当時の研究環境はのんびりしていた。よい思い出になっている」


 -発生学から「カドヘリン」の発見に至る道は。
 「京大時代、鶏の目の水晶体の発生を研究したが、うまくいかなかった。その中、培養条件で細胞のくっつき方が変わる現象を見つけ不思議に思っていた。さらに米カーネギー研究所へ2年留学した際、日本とは異なる手法で細胞をバラバラにすると、その後のくっつき方が違うことを見つけた。なぜか。京大に戻っても研究を続け、細胞膜にある特定のタンパク質にカルシウムイオンが作用して、細胞同士を接着することが分かった。1984年の論文で、『カドヘリン』と命名した」


 -以来、100種以上のカドヘリンが見つかった。発生学を志した研究者としては予想しない展開だったのではないか。
 「確かにそうだ。ただ、もともと発生学の目標の1つは、細胞同士がどのように集まって『形態』を作るかを明らかにすること。その意味では、細胞同士のくっつき方に関与しているカドヘリンを見いだしたことは、発生学とつながっている」