「クラスターの発生を責めるのでなく、寛容な社会になるべきだ」と語る渡邊教授(京都市右京区・京都先端科学大)

「クラスターの発生を責めるのでなく、寛容な社会になるべきだ」と語る渡邊教授(京都市右京区・京都先端科学大)

 9月に京都府内の私立学校で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したが、校名は公表されていない。府によると学校側は人権侵害を懸念しているという。それに対して「不安でたまらない」と公表を求める意見が京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。感染者が出た学校の公表は設置者の自治体や学校法人によって判断が分かれる。どう考えればよいのか。京都先端科学大の渡邊能行教授(公衆衛生学)に聞いた。

 -感染者が出た学校名は公表すべきだと考えるか。
 「公表する場合の考え方は二つある。一つはまん延防止に向けて市民に直接的なメリットがある場合だ。それは単に発生場所に近寄らないということではない。地域全体で3密(密閉、密集、密接)の回避やマスクの着用、手洗いを徹底しようという注意喚起につながることだ。また十分に濃厚接触者が追えていない場合、地域に知らせれば接触があった人がより早く医療機関に相談する効果も期待できる。もう一つは事例の共有のため。公表すれば他の施設もそこから学ぶことができる」


 -差別や中傷を恐れて公表しないと決めた自治体や学校法人もある。
 「感染症は人から人にうつる連鎖を断ち切ることが重要。濃厚接触者を特定し、そこに十分対応できているのなら不特定多数の人にアラームを発するための公表はしなくてもよいという考え方はある。また人権侵害の発生が危惧されるのであれば非公表も仕方がない。ただし理想的には、地域全体で気を付けられるよう気兼ねなく公表できる社会になることだと思う」


 -公表をしないと不安になる市民が多い。
 「正しく理解し、正しく恐れることが大事だ。感染は飛沫(ひまつ)や接触、エーロゾル(浮遊する微粒子)を通じて起こる。そもそもPCR検査をしても全体の約3割は陽性を見落としているとされ、市中に感染者がいるとも考えられる。そうであればクラスターに関係なく常に3密の回避やマスク着用、手洗いを励行することが重要だ。感染症は目に見えないため不安になり、それが公表しない施設への怒りにもつながる。しかし予防の最善を尽くし、それでも感染すれば不可抗力だったと考えるしかない」


 -施設の感染対策を問題視する声もある。クラスターが出た施設は責められるべきなのか。