「もう、あきらめた」。知人の高齢者はため息交じりでスマートフォンに目を落とす。何かと思えば、政府のポイント還元事業「マイナポイント」の申し込みで行き詰まったそうだ▼9月に始まった同事業では、事前に選んだキャッシュレス決済を使うと最大5千円分のポイントが受け取れる。期待の消費喚起策だが、煩雑な手続きが利用拡大の足かせになっている▼自宅で登録するにはカードリーダー付きの機器がいる。アプリの取得に暗証番号とマイキーIDの入力も必要だ。役所などでも申し込めるが、慣れていない人には難しい作業だ▼手続きに必須のマイナンバーカードも利便性を感じる機会は少なく、浸透していない。政府はマイナポイントをカード普及の起爆剤にと息巻くが、保有率は2割程度と伸び悩む▼最近では「ドコモ口座」に関連した預貯金の不正引き出しが次々と明るみになった。キャッシュレス化推進に冷や水を浴びせる問題で、電子決済サービスへの信頼性を揺るがす事態だ▼国民の不安が高まる中、菅義偉首相はデジタル庁の創設へ突き進む。マイナンバーと預貯金口座の連結や運転免許証との一体化もほのめかすが、まずは足元から。電子決済の安全対策はもちろん、デジタル難民を置き去りにしない施策にも目を向けてほしい。