国民年金や厚生年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の昨年10~12月の運用実績が14兆8039億円の巨額赤字となった。

 米中の貿易摩擦などによる世界的な株安で、国内外の株価が大幅に下落したことが要因という。

 これまでの最大赤字は、ギリシャの財政危機などが問題化した2015年7~9月期の約7兆9千億円だった。その2倍に近い。

 アベノミクスの一環で、株式運用の比率を倍増させたことが裏目に出た。政府は、12年の政権交代以降の運用収支は44兆円余りのプラスで「必要な収益は十分確保している」としているが、株式重視のリスクは明白ではないか。

 国民が老後に備える貴重な財産を、高いリスクにさらしてはいけない。長期的な安全性こそ第一との原点に立ち戻るべきだ。

 GPIFは主に、国内外の株式、国内外の債券の四つの資産に分散投資している。以前は国内債券の比率が6割を占めていた。

 14年に債券を抑えて株式の比率を高める方針を決定した。株高でアベノミクスを軌道に乗せ、支持率上昇につなげたい首相官邸の意向が働いたとされる。

 現在はほぼ半分を国内外の株式で運用している。実際にGPIFの資金が流入して市場が安定し、株価を下支えすることとなった。だが、年金資金を株価操作に使うような運用に批判も大きい。

 「出資者」である多くの国民が株式比率を増やすことに納得しているわけではない。国民との信頼関係を築かなくてはならない。

 それなのに十分な説明責任を果たそうという姿勢が見られないのはどうしたことか。

 運用結果についてGPIFは記者会見して質疑に応じてきたが、昨年11月公表分から突然取りやめ、動画投稿サイトに説明動画をアップするだけとなった。

 厚生労働省の関係者は「短期的な運用結果で批判されるのは本意ではない」などとするが、資金を預かっているという自覚に欠けると言わざるをえない。

 統計不正問題で行政への信頼は大きく揺らいでいる。結果はもちろん、運用の意思決定過程についても国民によく見えるよう透明性を高めることが必要だ。

 GPIFは20年度に資産構成割合を見直す。株式重視路線からの転換も検討すべきだ。とはいえ国内債券にもリスクはある。運用の在り方について国民を巻き込んだ議論が求められる。