優しく美しい魂。

 日本画家・小野竹喬(1889~1979年)は、茜(あかね)色の夕焼けや澄んだ空に浮かぶ雲など詩情あふれる風景画で知られる。その空や雲に、画家を目指しながら26歳で戦死した長男、春男の魂を竹喬は見ていた。京都府立堂本印象美術館の特別企画展「小野竹喬・春男-父と息子の切ない物語」は、竹喬作品と春男のスケッチなど約70点を展示、春男の存在を通して竹喬の画業を考える。

小野竹喬「夕茜」 1968年 岡山県立美術館蔵
小野竹喬「秋」 1957年 リベラ株式会社蔵
小野竹喬「志賀高原」 1960年ごろ ギャラリー鉄斎堂蔵

 竹喬は岡山県笠岡市に生まれ、14歳で京都の竹内栖鳳に師事した。伝統的な日本画を学ぶ一方、ヨーロッパ留学で西洋美術に触れ、土田麦僊らと発足させた国画創作協会で新たな日本画の方向性を模索した。

小野春男「茄子」 1941年ごろ 笠岡市立竹喬美術館蔵

 春男(17~43年)は京都市立絵画専門学校で学ぶ。ずばぬけて優秀だったといい、竹喬はその成長に期待をかけていた。画風も、ふんわりした竹喬に比べ、春男はシャープで色がはっきりし、作品「茄子(なす)」にみられるように、形をとらえる確かな力を持っていた。

小野春男「女性座像(絶筆) 1942年 笠岡市立竹喬美術館蔵

 しかし、春男は太平洋戦争で落命。竹喬は激しく落胆する。春男の日記から、出征前、父子の間に感情的な対立があったことがわかり、そのことも苦悩を深めたと推察される。

小野竹喬「月」 1944年 笠岡市立竹喬美術館蔵
小野竹喬「彩雪」 1978年 ワコースポーツ・文化振興財団蔵

 悲しみの中、竹喬は「これから二人分の仕事をする」と決意した。春男戦死の報を受けた時、雲に息子の魂が乗っているように感じたと語っており、戦後は空や雲を多く描いた。

 優しく美しい色の風景画の向こうに、痛みを少しずつ作品に昇華させ、新たな画境を切り開いた竹喬の覚悟が感じられる。


【会期】10月6日(火)~11月23日(月・祝)。月曜と11月4日休館、11月2日(月)は開館
【開館時間】午前9時30分~午後5時(入館は閉館30分前まで)
【会場】京都府立堂本印象美術館(京都市北区平野上柳町)
【入館料】一般510(400)円、高・大生400(320)円、小・中生200(160)円。かっこ内は20人以上の団体料金。65歳以上は無料(要証明)、障害者手帳提示の人と付き添い1人までは無料
【主催】京都府、堂本印象美術館、京都新聞
【問い合わせ】堂本印象美術館075(463)0007