テングシロアリの仲間の兵隊。頭の先につき出した部分が見える

テングシロアリの仲間の兵隊。頭の先につき出した部分が見える

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 シロアリは、大繁栄しているものの一つです。すべて集めて重さを測ることができたなら、地上の動物のおよそ1割を占めると見積もられています。しかし、禍福はあざなえる縄のごとし。これだけたくさんいて、そのうえ種類によっては数十万匹以上が社会を作って一つの巣で暮らし、さらに柔らかい体を持つとくれば、エサとして狙われやすくなるのも必定です。

 もちろんシロアリも黙っていません。仲間を天敵から守る兵隊役がいる場合があり、大きなアゴを備えたシロアリが、襲ってきたアリなどにかみついて撃退する種類も見られます。

 とはいえ、やはり肉弾戦より飛び道具。相手のリーチが届かないところから攻撃したい。そんな私のハートをわしづかみにするのはテングシロアリの仲間。このグループの兵隊は、頭の前方がテングの鼻のように細長く突き出しており、ここからネバネバする化学物質を飛ばします。まるで大砲です。遠くからネバネバをかけられたアリはあわててこすり落とそうとしますが、そうすると、これがさらに体にまとわりつき、触覚は動かなくなるわ、体のあちこちに開いた呼吸のための穴がふさがって息がしにくくなるわと、被害甚大です。その上、この物質には他の兵隊を呼び寄せるはたらきもあり、数で圧倒されるとアリはもう手を出すことさえかないません。長篠の戦いに敗れた武田勝頼の心境やいかに。

 化学物質を使うために身を犠牲にするシロアリもいます。襲ってきた敵の近くで、兵隊が自ら破裂して体内に蓄えた毒液をまき散らすのです。飛び道具のメリットも何もありません。シロアリさんたら何をバカなことを? と一瞬思うのですが、振り返るに人間にも似た行いは見られるわけで、他の生き物のことはあまり言えないなと反省します。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。