京都駅に停車する新幹線「のぞみ号」。かつては通過する電車があった(8月、京都市下京区)

京都駅に停車する新幹線「のぞみ号」。かつては通過する電車があった(8月、京都市下京区)

 京都と東京を2時間強で結ぶ新幹線「のぞみ号」。今では全列車が京都駅に停車するものの、1992年3月の誕生当初、通過する便があった。

 東京を午前6時に発車する列車で、JR東海は当時、新大阪まで2時間半で到着することを最優先に名古屋とともに通過を決めた。

 愛知県側は「名古屋飛ばし」と猛反発した。この言葉は、かつて有名歌手の全国ツアーが名古屋では催されなかったことなどに由来し、“重要なものが素通りする”との意味で使われる。のぞみ通過は飛ばされることに敏感な市民の反感を呼び、政財界が抗議する事態に発展した。名古屋出身の記者には、気持ちがよく分かる。

 一方、京都府側に目立った反発はなく、京都市は「詳しい資料は残っていない」。通過は1本だけで観光への影響は少ないことが背景にあったようだ。通過初日の京都新聞紙面もあっさりした表記で、市民の関心も低かったと思われる。

 5年半後、通過列車は廃止された。JR東海は「技術開発で京都、名古屋に停車しても2時間半で運行可能になった」と説明、反対運動は「直接の影響はない」とした。ただ名古屋を軽視すると面倒くさいという認識は、経営陣の胸に深く刻まれたことだろう。

 四半世紀以上が過ぎ、リニア中央新幹線(東京・品川-大阪)の工事が進む。すでに名古屋駅で工事は始まったものの、京都政財界の求める京都駅経由は厳しい情勢だ。現在はリニアの「京都飛ばし」に苦しんでいる。