京都平安ホテルで軽症者らのケアに当たってきた看護師=京都市上京区・同ホテル

京都平安ホテルで軽症者らのケアに当たってきた看護師=京都市上京区・同ホテル

患者が療養する個室。各部屋にタブレットや体温計などが備えられている(京都市上京区・京都平安ホテル)

患者が療養する個室。各部屋にタブレットや体温計などが備えられている(京都市上京区・京都平安ホテル)

 新型コロナウイルス感染症では、重症患者の病床を確保するため、無症状や軽症の患者は病院以外の宿泊施設で受け入れられてきた。医療従事者にとっても宿泊施設でのケアは初めての経験。何に気を遣い、どんな難しさがあるのだろうか。京都府内のホテルで従事した看護師2人に聞いた。


 府内では4月15日に京都平安ホテル(京都市上京区)、5月7日にホテルヴィスキオ京都(南区)で受け入れが始まった。9月17日までに、京都平安ホテルで208人、ホテルヴィスキオ京都で136人が療養した。

 府によると、患者は毎日2回、各部屋に配備されたタブレット端末から無料通信アプリLINE(ライン)で体調を報告し、常駐する看護師が必要に応じて電話やビデオ電話で詳しく聞き取る。一方、患者と看護師は直接の会話や身体接触が原則禁止されている。

 万が一、看護師が症状の悪化を見落とせば重篤化の危険もありうる。京都平安ホテルに常駐した経験のある看護師の女性(37)はオンラインだけのやり取りについて「通常の健康観察はある程度可能だった」と話す。ただ、関係者によると、難しく感じた看護師もいたようで課題は残るという。

 症状に異変があれば、医師の診察を経て、病院搬送や入院の是非が検討される。これまでに高熱が続き、おう吐を繰り返すなどした10人がホテルから病院へ移った。しかし、医師の巡回は1日1回のみ。室内にカメラはなく、夜間に容体が急変し意識を失えば、異変の兆候を看護師が知るすべはない。

 幸いそうした事例はまだないが、女性は「看護師に訴えることもできないまま夜間に病状が悪化しているかもしれないと考えると、緊張感があった」と振り返る。そうならないためにも心配な患者には夜中でも何かあれば連絡するように念を押したという。

 患者の精神的なケアにも気を配ることが求められた。同じく京都平安ホテルを担当した別の看護師(62)は「入所する前にさまざまな誹謗中傷を受け、『つらい』と打ち明ける人もいた。ただ、患者さんがしんどい時に背中の一つもさすれないのはもどかしかった」と語る。

 両ホテルの運営は府看護協会が担ったが、看護師は不足しており、常駐者を確保するのに苦労した。そのため、看護師資格を持つが現在は離職している人や求職中の人ら計約2600人に同協会がメールやはがきで協力を呼び掛けたところ、31人が集まった。

 看護師の女性は3月に京都市内の病院を辞め、青年海外協力隊としてセネガルに赴任する予定だった。が、コロナ禍で延期となり、呼び掛けに応じた。「コロナで大変な時に病院を辞めてしまったので、働く場所を与えていただいてありがたいです」と笑顔を見せる。

 同協会はホテルに加え、府内の保健所や帰国者・接触者外来にも看護師を派遣しており、千葉圭子専務理事(61)は「看護師の視野の広がりやキャリアアップにつながっている。今後も府民の健康を守るためコロナ対策に貢献できれば」と話している