勢力を落とすことなく上陸した台風19号は、東日本の広範囲に記録的な大雨を降らせ、大きな爪痕を残した。

 死者・行方不明者は合わせて80人に達した。被害はなお拡大しており、全容は分かっていない。停電や断水が続いており、被災地の状況が心配だ。

 政府や自治体は実態把握を急ぎ、支援へ全力を挙げてほしい。先月の台風15号では対応が後手に回った。同じことを繰り返してはならない。

 被災地では市役所なども被害を受けており、国や県が主体的に対応する必要がある。住宅の浸水、農作物被害も深刻だ。生活再建へ息の長い取り組みが求められる。

 気象庁は早い段階から警戒を呼びかけた。今回、鉄道各社の計画運休など早めの対応が目立ち、市民生活への混乱を小さくした側面はあるかもしれない。

 それでも甚大な被害が出たことを重く受け止めるべきだ。驚くのは50河川を超える堤防決壊の多さで、さらに増える可能性がある。

 強い雨が広範囲で降り、河川が水を受け止め切れなくなった。各地で大規模な洪水が発生し、住宅地などをのみ込んだ。

 自民党の二階俊博幹事長が被害について「まずまずに収まったという感じ」と発言したのは違和感を覚える。後に撤回したが、なぜこれほど被害が広がったのか、しっかり向き合うべきだ。

 洪水の起きた地域では多くの住民が家に取り残され、ヘリで救助された。豪雨被害のたびに同じ光景が繰り返されている。

 情報がきちんと伝わっていたのかを含め、事前の避難対応について検証が必要だ。高齢者に自主避難を求めても困難な場合もある。「備え」の在り方を一から見直すべきではないか。

 茨城など4県と国は12日夜から13日未明にかけ、治水機能を持つ6カ所のダムで満杯近くになった水を緊急放流した。決壊を防ぐためやむを得なかったという。

 しかし、昨年の西日本豪雨を受けて有識者が提言した事前の水位調整を実施していなかった。教訓が生かされたとはいえない。

 安倍晋三政権は国土強靱(きょうじん)化を進めるが、ハード対策には限界が見える。「堤防さえあれば」という意識に落とし穴はないか。

 台風被害はこれまで主に西日本で起きていた。東日本で相次ぎ、記録的な量の雨が降るなど想定外が常態化している。

 私たち一人一人の防災意識も改めて問われる。