大文字山の火床から一望する京都市内。この景色を求めて多くのハイキング客が訪れる(京都市左京区)

大文字山の火床から一望する京都市内。この景色を求めて多くのハイキング客が訪れる(京都市左京区)

群生しているウリハラカエデ。鹿害から逃れ、秋には美しく紅葉する(中腹付近)

群生しているウリハラカエデ。鹿害から逃れ、秋には美しく紅葉する(中腹付近)

地質や植物について解説する久山さん。30年近く山と向き合ってきた(京都市左京区・銀閣寺登山口付近)

地質や植物について解説する久山さん。30年近く山と向き合ってきた(京都市左京区・銀閣寺登山口付近)

 五山の送り火で知られる標高465メートルの大文字山(京都市左京区)は、市民がハイキングに出掛ける身近な里山でもある。火床から眺める景色も美しいが、自然や地質の観察、歴史探索など多彩な楽しみ方が詰まっている。子どもへの環境学習を行う団体「フィールドソサイエティー」(左京区)代表で、著書「大文字山トレッキング手帖(てちょう)」がある久山喜久雄さん(65)の案内で奥深い魅力を探った。

■マグマ上昇の痕跡も、興味深い地質

 10月上旬、久山さんと銀閣寺前で待ち合わせた。鹿ケ谷まで約4キロのコースへいざ出発、と思いきや、山門の黒い敷石を指さし、「京都の地殻変動の一端です」と足を止めた。敷石は「ホルンフェルス」と呼ばれる岩石で、約9千万年前、大文字山と比叡山の間にマグマが上昇した際、高熱で堆積岩が変成したものだという。

 標高の低い部分はマグマが冷えた花こう岩が多く、登山道の中腹辺りからホルンフェルスに変わるとのこと。銀閣寺によると、敷石は周辺の山から採取したものを利用したという。花こう岩には黒雲母などの鉱物が含まれ、登山口近くの川が赤茶色なのは鉱物の酸化が原因らしい。「地質だけに注目しても非常に面白いですよ」。登る前から未知の世界にいざなわれる。

■植生、野鳥、豊かな自然

 登り始めて間もなく、樹皮がつるっと美しいリョウブが現れる。かつては新芽をご飯に混ぜて食べるなど貴重な食材だったそうだ。ムクノキの葉は漆器作りに使われ、サルトリイバラは葉でお餅を包んでいた。森と人の営みが結び付いていたことが分かる。「コケやキノコも豊富。真剣に観察し出すと先に進めません」

 標高270メートルほどにある千人塚周辺ではウリハダカエデが群生していた。「シカ害が植生に深刻な影響を与えているが、これはシカが好まない」といい、紅葉の季節には、朱や黄色に色づくという。この辺りで岩の色が白から黒に変わった。花こう岩とホルンフェルスの境目だ。

 ビィビィ。鳴き声が聞こえた。「ヤマガラだ」。双眼鏡を出して声の方向を見つめた。エナガ、シジュウカラ、コゲラ…。午後3時すぎには餌を求めて次々と鳥がやってくる。