全国の自殺者が増加の兆しをみせている。警察庁の速報値では、8月の自殺者は1849人で、前年同月より246人も増えている。7月から増加に転じた。

 ここ10年、地域のNPOや自治体などのさまざまな取り組みで、国内の自殺者は減り続け、ピーク時の3万人台から昨年は2万人を切ろうとするところまでになった。

 増加の要因は、それぞれの事情や背景などを分析しなければ、確かなことは言えない。ただ、悩みの相談などをみると、新型コロナウイルスの影響で精神的なストレスを抱える人が増えていることと深く関係していよう。

 コロナ禍への不安が続く中で、支えが必要な人を見逃していないだろうか。そばにいて声をかけ、悩みの相談窓口の利用を勧めたい。国、自治体、NPOは自殺防止の連携を生かし、支援体制を拡充する必要がある。

 警察庁の速報で気になるのは、女性の自殺が急増したことだ。前年8月より40%も増え、男性の6%増と比べて顕著だ。コロナによる外出自粛で、夫や子どもの在宅が増え、女性に負担がかかっているとも指摘されている。

 今月発表された8月の完全失業率が3・0%に悪化したことも懸念材料だ。その多くがパートやアルバイトなど非正規従業員だ。営業自粛を強いられた飲食業や観光業の中小経営者からも、悲痛な声が上がっている。

 生活困窮や先が見通せない不安から、自らを追い詰めてしまうことになりかねない。公的な支援策を届けることが、今こそ求められている。

 厚生労働相の指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」が、インターネット上に「支援情報ナビ」を設けている。NPO活動で自殺防止に取り組んできた清水康之氏がセンターの代表理事となり、「ここまでたどり着きさえすれば、生きるために必要な情報が見つかる」を目指している。

 各省庁の支援策情報がデータベースに登録してあり、利用者は自身の困り事を選んでいくだけで必要な支援策を見つけられる。「こころのストレス度チェック」では自分の精神状態を客観視し、深刻な人には即時に相談・支援につなげる。スマートフォンでも相談を受けられるので、利用しやすい。

 さまざまな取り組みが期待される中で、心配なのはコロナの影響もあって多くの支援団体が相談員不足や資金難を抱えていることだ。政府は援助を急いでほしい。