東京五輪・パラリンピック組織委員会が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で来夏に延期された大会の簡素化策を打ち出した。

 52項目を見直して300億円の開催経費を削減・圧縮できると、国際オリンピック委員会(IOC)の理事会で報告した。

 バッハ会長は、終了後の会見で「順調な進展があった。大きな成果だ」と評価した。

 だが、従前の総経費1兆3500億円のほか、1年延期に伴う数千億円の追加経費とコロナ対策費の上積みが必要とみられている。この程度の圧縮では「焼け石に水」との印象は否めない。

 さらに抜本的な見直しの深掘りと、追加の費用負担についての説明責任が求められよう。

 52項目のうち、会場の仮設施設の見直しや照明の削減などで150億円を圧縮。競技場や選手村などの装飾の30~40%削減でも10億円減を見込む。

 組織委の人員見直しなどでも30億円を削減する。選手を除く大会関係者約5万人を10~15%減らし、「聖域」とみられていたIOC委員らの飲食、輸送などの接遇費にも切り込んだのは当然といえるだろう。

 それでも、削減効果が限定的にとどまったのは、既に多くの費用が今夏の大会開催に向けて投入済みだった上、延期しても競技や選手の規模を維持するとしたIOCの方針のためだ。

 さらに、巨額の放映権料を支払う米テレビ局の反発が強いとされる開閉会式の時間短縮や、スポンサーが絡む聖火リレーなどの見直しはほぼ手つかずとなった。

 「期待外れ」とする批判に対し、組織委の森喜朗会長は「(放映権など)IOCの契約を組織委が変更するのは不可能」と釈明した。商業主義に縛られた五輪の弊害を示していよう。

 一方、大会運営を巡ってバッハ氏は「海外からの観客がいるのが前提」と述べ、改めて無観客での開催を否定した。世界から集まる選手と関係者、観客らの感染対策に万全を期し、「安全な五輪」と両立することが不可欠である。

 組織委は延期に伴う追加コストの総額を年内に算出し、国や都との分担協議が本格化する。ただ、国民の間にはコロナ対応を優先すべきだとの声も少なくない。

 コロナ後の世界でどのような五輪・パラリンピックが求められるのか。新たなモデルを提示し、多くの人々の理解と支持を得られることが必要といえる。