原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡り、北海道寿都(すっつ)町が文献調査への応募を正式表明した。道内の神恵内(かもえない)村も調査を受け入れる意向を示した。

 自治体の受け入れ表明は、2007年に応募し、後に住民の反対で撤回した高知県東洋町以来だ。長年膠着(こうちゃく)状態だった処分場選定のプロセスが動きだすことになる。

 ただ、寿都町が応募検討を明らかにしたのは8月中旬で、神恵内村も調査受け入れを求める地元商工会の請願が村議会に出されてから1カ月しかたっていない。受け入れの是非について議論が尽くされたとは思えない。

 住民の中には、懸念や反対の声がある。両首長がトップダウンで受け入れを決めた形だが、結論を急ぐ理由があったのだろうか。拙速な判断は将来に禍根を残しかねない。

 文献調査は処分場選定に至る三つの事前調査の第1段階だ。文献調査を受け入れると、2年間で最大20億円の交付金が受け取れる。

 次の段階に進む際には市町村長や知事の同意が必要になるが、第2段階の概要調査に応募すれば、さらに最大70億円が交付される。自治体はいつでも辞退でき、交付金は返さなくてもよいことになっている。

 道知事は反対しているが、寿都町長は概要調査の受け入れにも意欲を示しているという。誘致を前提とせず、調査を受けるだけで交付金が得られるプロセスは正常とは言えない。

 実際に調査が始まれば、後戻りするのは簡単ではないだろう。

 今回、調査を受け入れた2町村は人口減少などで財政が悪化している。交付金に依存し、安全性の吟味が不十分なまま処分地選定が進むおそれがある。

 核のごみは地下300メートルより深い岩盤に埋める「地層処分」にすることが法律で決まっているが、地震の多い日本で長期間、安全に管理できるかといった不安は根強い。住民や周辺自治体などが懸念するのは当然だ。

 処分場がないまま原発政策を進め、核のごみを増やし続けた責任は政府にある。住民が正確な知識に基づいて是非を判断できるよう、処分計画やその安全対策について国は十分な情報提供を行わなければならない。

 原発の核ごみ処分は、電気の恩恵を受けてきたすべての人が向き合うべき問題だが、関心は低いままだ。避けては通れない課題であることを肝に銘じる必要がある。