「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような」。昭和の東京五輪の開会式が行われたのは1964年10月10日。アナウンサーはそう表現したが、気持ちが晴れないまま京都で過ごした人がいる▼京都市上京区の岩本光司さんは当時、早稲田大4年生。バタフライで泳ぐ写真が公式ポスターに採用されながら、3カ月前の選考会で代表入りを逃した。五輪期間は実家の手伝いをしながらテレビで見守った▼長く競技から離れ、プールに戻ったのは46歳の時。ゴルフの上達に役立てばと泳いでみると全力を振り絞る心地よさを体が覚えていた。マスターズ世界記録の更新がライフワークになり、78歳の今も現役スイマーだ▼そして令和の東京五輪。1年延期され52項目の簡素化も示されたが、開催への道筋は曇ったままだ。主役の選手はもちろん、仕事で関わる関係者やボランティアら気をもんでいる人が少なくない▼「縮小しても絶対に開催してほしい。いろいろ意見があると思うが、スポーツには人を勇気づける力がある」と岩本さん。五輪という特別な舞台を目指して歩みを止めない若者たちに思いを寄せる▼前回は秋晴れに恵まれたが、来年7月23日はどんな空が広がるだろう。世相のもやもやを吹き飛ばす突き抜けた青さが見られるといいのだが。