大阪市を廃止して4特別区を設ける「大阪都構想」の住民投票(11月1日)が、あす告示される。仮に賛成多数なら、2025年元旦にスタートとなる。

 都道府県並みの権限を持つ政令指定都市の「解体」は、前例のない自治体改変である。

 だが、何のために大阪市をなくすのか、その理由は分かりにくいままだ。大阪維新の会代表の松井一郎市長が言う「二重行政の解消」は、市を廃止しないと本当に実現できないのか。

 9月上旬の共同通信世論調査では、構想そのものへの賛成は5割近くに達し、反対を上回った。ただ、構想に関する大阪府と市の説明には7割が「十分でない」と答えている。

 都市が抱える課題は多岐にわたる。自治体のかたちを変えることが本当に問題解決につながるのか。府と市はいっそう丁寧な説明が必要だ。大阪市民も熟慮のうえで票を投じてほしい。

 都構想は5年前の住民投票で否決された。今回は特別区の数などが変更されたが、趣旨や内容は大きく変わっていない。

 生活レベルの疑問点もそのままだ。例えば保育所は、現在は全市域どこでも利用できるが、この仕組みが分割後の特別区に引き継がれるかは不明だ。

 防災対策にも懸念が残る。分割後の特別区の中には一部部署が区を超えて別の区庁舎に入居するケースもあるという。越境入居はコスト削減のためだが、区域外勤務の職員が多ければ災害対応の弱体化も心配される。

 財政運営に関しては、制度移行後の歳出削減効果が1兆円を超えると試算されているが、コロナ禍の影響が入っていないとの批判が出ている。

 こうした疑問に、市は明確な回答を示せていない。

 市主催の住民説明会は8会場で行われたが、コロナ感染への考慮から前回の39回と比べて少なく、説明内容も「メリット一色だった」などと不満も出た。

 投票日まで残された時間は多くない、オンラインなど可能な手段を使って市民に説明する機会を設けることが不可欠だ。

 自治の観点からいえば、大都市よりも住民に近い特別区に公選首長や議会を置くとの考え方は十分理解できる。

 これまでの自治体改革は合併で規模を拡大する方向に傾斜してきた。合併した市町村で中心部と周辺部の格差が広がるなどの弊害が出ているのは確かだ。

 ただ、大阪市のような巨大都市では、強い権限・財源のもとで市全域の都市計画や医療などの政策を進めてきた。特別区に分割されれば政令市の権限を一部失うほか、区ごとに格差が生じても調整しにくくなる。

 京都市や横浜市などは、地域活性化のけん引役として、政令市の権限をさらに強化した「特別自治市」の創設を主張する。

 政令市を廃止・解体する都構想は、そうした動きとは逆の流れといえる。特別区の首長や議会が「大阪都知事」と対立して政策が進まない可能性もある。

 それでも多額のコストをかけて住民に信を問う以上、構想が抱える課題も誠実に示し、市民に公平な判断ができる材料を提供しなくてはならない。