感染症のはしかの名は、イネ科植物の穂先につくとがった毛「芒(はしか)」に由来するといわれる。皮膚に触れた時の痛がゆい感じが症状と似ているからだ。その感覚は「はしかい」という方言にも残る▼その患者数が今年に入り大阪府などで急増し、過去10年で最多のペースという。一過性の病気とみられがちだが、3割が肺炎や脳炎などの合併症を起こし、死亡することもあるから甘くみてはいけない▼ウイルス学者の山内一也氏によれば、日本での最古の記録は奈良時代の文書にまでさかのぼる。鎖国で侵入が限られていた江戸時代は、流行も20~30年間隔と少なかったが、明治期に海外との往来が盛んになると常在化したらしい▼ワクチン接種で近年、発生が減り、国内由来のはしかは「排除状態」にあると2015年に世界保健機関(WHO)から認定された。その後の感染は海外由来とみられるが、接種が1回の人や感染経験のない人は、免疫が不十分で感染リスクが高く、油断できない▼もっとも、はしかのウイルスを悪玉とだけみるのは早計かもしれない。体のさまざまな細胞機能を破壊する力を逆に利用して、がん細胞を溶かす新治療法の研究が急速に進んでいるそうだ▼人類のよき伴侶となる日を待ちつつも警戒心を緩めないようにしたい相手である。