今年のノーベル平和賞が、食料支援活動を続ける国連機関、世界食糧計画(WFP)に贈られることになった。

 授賞の理由は「飢餓と闘い、紛争の影響を受ける地域で平和に向けた環境を改善した」ことなどが挙げられた。

 WFPは1961年の設立以来、戦争や自然災害などに苦しむ地域で人道支援に当たってきた。2019年は88カ国の約1億人に計約150億食分の食料を提供している。

 授賞は、長年の地道な活動を評価すると同時に、世界各地で紛争と新型コロナウイルス感染が広がり、飢餓の瀬戸際に立たされる人々が急増している危機的状況に警鐘を鳴らす狙いがあろう。

 WFPの活動は、政治的立場によらない人道主義と現場第一に徹しているのが特徴だ。

 現在、内戦が続くシリアやイエメン、イスラム教徒少数民族ロヒンギャが迫害されているミャンマーなどで緊急支援を展開。国際協調を拒む北朝鮮にも入り、20年以上も食料支援を続けている。

 1万7千人超の職員のほとんどが発展途上国の現地で働き、自前で90機以上の航空機や数千台のトラックを運用する実働部隊だ。その強みがコロナ禍で民間物流が寸断されても食料、医療物資の輸送継続に生かされている。

 近年、世界の飢餓人口は減少傾向だったのが、数年前から増えている。主な要因は紛争だ。加えて干ばつなど異常気象、新型コロナ流行が追い打ちとなり、WFPは深刻な飢餓状態がコロナ前から倍増の3億人近くに達する恐れがあると警告している。

 こうした状況に授賞理由で強調されたのが、飢餓や貧困の改善が紛争を防ぐという「食料安全保障」をWFPが具現化し、国際協力で重要な役割を果たしていることだ。「国際的な連携と多国間協力の必要性が今ほど明白な時はない」と呼び掛けている。

 世界でトランプ米大統領らが掲げる「自国第一主義」が広がることへの危機感の表れでもある。

 世界保健機関(WHO)脱退を通告した米国のほか、各国の資金提供が細って継続が危ぶまれる国際協力活動が少なくない。国連機関が果たす役割に改めて光を当て、内に向きがちな目を世界の現実へ広げてもらう意義は大きい。

 受賞決定を受け、WFP事務局が語った「最も貧しく弱い人々を世界が思い起こすきっかけになってほしい」との訴えを受け止めたい。