京都市交通局の横大路営業所。ハザードマップでは3~5メートルの浸水が想定されている(京都市伏見区横大路橋本)

京都市交通局の横大路営業所。ハザードマップでは3~5メートルの浸水が想定されている(京都市伏見区横大路橋本)

 バスを水害から守るため、京都や滋賀の事業者が車両の避難計画を策定する動きが相次いでいる。昨年10月の台風19号では、車庫に止まっていたバスが浸水し、運行に支障が出るケースが発生。「市民の足」を維持するべく、高台の駐車場の確保や避難開始基準の明確化を進める。一方、いつ運休や避難を始めるかで悩む事業者もおり、人員の少ない早朝や夜間の対応も課題になっている。

 京都市交通局は横大路営業所(京都市伏見区)など3カ所の車庫がハザードマップで浸水想定区域内にあり、8月にバスの避難計画を初めて策定した。近くの河川で氾濫発生情報(大雨・洪水警戒レベルで最高のレベル5相当)が発令される可能性があると判断した場合に避難する。避難場所として、高台の駐車場など2カ所を確保した。自動車部運輸課は「災害直後でも、できるだけ早く運行を再開できるよう備えたい」としている。

 民間事業者も対策を進めている。京都京阪バス(京都府八幡市)は7月、八幡市と洪水時に関する協定を結んだ。台風最接近の8時間前から、浸水想定区域の住民をバスに乗せて避難させる。一方、市は廃校のグランドなど車両の避難場所を提供する。丹後海陸交通(京都府与謝野町)は京都府京丹後市の協力で、同市の間人車庫で浸水が予想されるときは、前日に内陸にある大山工業団地に退避している。京阪バス(京都市南区)では、グループ会社の駐車場も活用する予定という。

 事業者が危機感を持つのは、台風や豪雨でバスが浸水する被害が相次いでいるためだ。昨年10月の台風19号では、福島県郡山市の車庫に止まっていたバス92両が水没。数日間全路線が運休に追い込まれた。そのため、7月に国土交通省はバスや鉄道など運輸事業者に対して、車両の避難場所の確保や計画の策定を促す指針を示した。

 一方、バスの避難時には路線の運休も必要になる。利用者に影響が出るため、いつ避難を始めるかで悩む事業者も少なくない。京阪バスや京都バス(京都市右京区)は避難場所を確保したが、避難開始は状況を見て適宜判断するとしている。京都バスの担当者は「実際に起きてみないと分からない部分も多い」と不安を口にする。早朝や夜間は運転手が少ないため、急な退避が難しいのも課題だ。

 ■平時から利用者の理解を

 早稲田大創造理工学部の小松原明哲教授(安全人間工学)は「事業者は『まだ大丈夫』と思い込む正常性バイアス(先入観)に陥らないよう、運休や避難開始の基準は明確に決めておくべきだ。また、平時から利用者に基準を広報して理解を得ておくのが望ましい」と指摘する。