イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 ヒトを含む多くの動物は、子を得るためにオスメスが力を合わせる必要がありますが、その負担を両性が平等に分け合っているとは限りません。ここで自分だけが損をしていると思いこむと、負担を相手に押し付けようと争いになってしまいます。

 雌雄同体の生き物にもそんな争いがあります。ドイツにあるマックス・プランク研究所のニコ・ミッシェルさんたちが調べたのは、海に住むヒラムシの一種。その名の通り平べったい形をしていて、繁殖の仕方が私たちとはまったく違っています。オス役のヒラムシが相手の体に交尾器を突き刺して穴を開け、そこから皮膚の下に精子を注入するのです。送り込まれた精子は体内を泳いで卵に到達し、晴れて受精が起こります。

 このため、ヒラムシはメス役になると文字通り傷つきます。一方のオス役は気楽なものです。お得です。そんなわけでヒラムシは、誰もがオス役になりたがり、繁殖の際は2匹ともが伸ばした交尾器を剣のように振り回し、相手を突き刺そうと大立ち回りを演じます。そして勝ち負けが決まるのでしょう。多くの場合で1匹だけが父となります。争いの結果、卵から離れた場所を間違って刺してしまい、精子がうまくたどり着けず効率的に子を残せないことも多いようですが、オス役メス役の負担の差があまりに大きいので、争いをやめることはできないのでしょう。

 ヒトの場合、出産という形で女性に負担が偏りますが、これを男性に分担させるのは不可能なので、ヒラムシのような争いにはなりません。一方私たちには長い子育て期間があり、ここで男性が多く負担すれば偏りを戻すことができます。ですが、行き過ぎることだってあるでしょう。じゃあひょっとして主戦場はここなのか?と思いながら、私は妻子の洗濯物を干すのです。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。