「泥縄だったけど、結果オーライだった」―。首相官邸スタッフの証言は政府対応の混乱ぶりを象徴しているとも言える。

 未曽有の新型コロナウイルスの感染拡大を巡り、政府はどう対策に取り組んだのか。研究者や弁護士らの民間臨時調査会が、安倍晋三前首相らへの聴取を基に報告書をまとめた。全国一斉の休校要請や緊急事態宣言発令など半年間の施策を検証し、未知のウイルスが相手とはいえ「場当たり的な判断の積み重ねだった」と総括した。

 手厳しいが、考察は的確だ。コロナ対策は今も継続中であり、政府は真剣に受け止めて再拡大に備えた政策に生かしてほしい。

 コロナ民間臨調は独立系シンクタンクが7月に立ち上げ、政府の施策を検証するため、閣僚や官僚ら83人から聞き取り調査した。

 報告書は、欧米と比べ死亡率や経済への打撃を抑えられた点を評価した。一方で経済再開を重視する首相官邸と専門家の意思疎通の不十分さに言及。場当たり的な政策決定の過程を浮き彫りにし、「今後も危機管理がうまくいく保証はない」と断じている。

 国内で最初に感染者が確認された1月以降、政府がコロナ禍に対処してきた時々の局面を分析しており、興味深い。

 例えば「アベノマスク」は問題の多い政策だったと指摘した。4月に使い捨てマスクが不足する中、安倍氏が1世帯当たり2枚の布マスク配布を決断したが、送付に時間を要し、世論の反発を招いた。厚生労働省や経済産業省との事前調整はなかったといい、「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」(官邸スタッフ)との生々しい証言に驚き、あきれる。

 安倍氏は、欧米のようなロックダウン(都市封鎖)といった強制措置を講じずに感染抑制と経済活動を両立したのが「日本モデル」であると自賛していた。

 だが長期の営業自粛に対する経済的補償やPCR検査能力の拡大など、大規模感染症への備えを欠いていたのは間違いない。報告書は国民の自主的な協力を前提とした危機管理体制は「重大な脆弱(ぜいじゃく)性を抱えている」と警告し、今後の危機に備える提言を列挙している。

 民間臨調の強みは、政府や官僚の思惑、誘導を受け付けず、自由に検証して、国民目線で筋の通った注文を出せる点にある。コロナ禍の影響は大きく、国民の目はいつになく厳しい。その常識を代弁した民間臨調の提言をおろそかにしてはなるまい。