いかにも苦しい言い訳ではないか。日本学術会議の会員任命拒否を巡る政府の弁明だ。菅義偉首相は会議側が推薦した105人全員の名簿を見ていなかったが、任命の考え方は共有しており、「手続きに問題はない」とした。

 菅氏は、学術会議からの推薦者のうち6人を新会員に任命しなかった。その理由について、「推薦された人を全て任命するという前例を踏襲していいのか」「会議の在り方について、総合的、俯瞰(ふかん)的な観点から考えた」と、任命権者たる自らが主体的に判断したと説明してきた。

 にもかかわらず、全員の推薦名簿を「見ていなかった」との発言は、自身の説明と大きく矛盾するのではないか。資料を精査することなく、人選の是非など決められるはずがない。識者からは、推薦に基づいて任命すると定めた日本学術会議法に違反するとの指摘も出されている。

 ならば、法の趣旨からも尊重すべき元の推薦名簿から、いったい誰が6人を外したのか、という疑問が浮上する。

 一連の手続きについて、加藤勝信官房長官は「決裁までの間に首相に任命の考え方を説明し、内閣府が起案し、首相が最終的に決裁した」と述べ、違法性はないとした。

 菅氏が9日の内閣記者会のインタビューで「(学術会議の)推薦段階の名簿は見ていない」と語ったことについても、105人分の名簿を決裁時に添付しており、「詳しく見ていなかったということだ」と軌道修正した。首相発言につじつまを合わせたように受け取られても仕方がない。

 あくまで問題の根幹は、6人が任命を拒否されたことにある。排除に至った「任命の考え方」について、「詳細については人事の話だから控える」と、政府が逃げ口上の説明でごまかすことは許されない。

 今回の任命拒否には、学問や表現の自由、学術会議の独立性と自主性を脅かす、との強い懸念が研究者や法曹界、人権団体などから出ている。菅政権が学術会議を行革の対象として挙げたのは論点ずらしだ、との批判も野党側から上がっている。

 6人が任命されなかったのは、安全保障法制など安倍晋三前政権の施策を批判した研究者を排除した人事だとする疑念が持たれている。菅氏は会員の任命における不透明なプロセスを明らかにする必要がある。