人生には競争がつきものだ。早い遅い、高い低い、などさまざまな尺度がつきまとい、望むと望まざるとにかかわらず勝った負けたに一喜一憂しなければならない▼だが、勝者が常に満足を得られるかといえば、そうではない。例えば、物品の入札に用いられる競売(オークション)。応札額がどんどんつり上がり、落札者が手に入れた時には実際の価値を超えていた、なんてこともある▼今年のノーベル経済学賞に選ばれた米大学の2氏は、そんな矛盾をはらむ競売のメカニズムを説き明かした。単純な競り上げ方式だけが競売の形でないことを証明した▼落札者が自ら示した最高価格ではなく、2番目に高い入札額で買い取れる「第2価格方式」は、すでにネット広告枠の競売などに活用されているという。落札者をはじめ、出品者、ひいては社会も恩恵を得られるようなオークション方式の発明につなげたことが評価された▼競売に限らず、人は本来の目的を忘れて目の前の勝ち負けに熱中してしまう時がある。一歩前、一段上にいることがそれほど意味をなさない場合でもだ▼経済の分野では、高すぎる額を示して被った損失や後悔を「勝者の呪い」というそうだ。周りに流されず、価値を見極められる自分なりの尺度を持って、競争社会を乗り切りたい。