同一労働同一賃金の実現に水を差すことになってはなるまい。

 非正規労働者と正社員の待遇格差に関し、賞与や退職金が支払われないことの是非が問われた2件の訴訟で、最高裁は「(正社員との)不合理な格差には当たらない」と結論づけた。使用者側の裁量を広く認めた判断といえる。

 ただ、判決は賞与や退職金の支給の在り方について、法が禁じる「不合理な格差と認められる場合はあり得る」とも述べた。

 今後の訴訟で、こうした格差が認められるかどうかは個々に検討されることを意味する。判決が非正規労働者に賞与や退職金を支払わなくてもよい前例になるのでないことは押さえておきたい。

 退職金に関し、判決は労務対価の後払いや長年の勤務に対する報償などの性質があると指摘し、継続的な就労が期待される正社員に支給されるもの、と位置づけた。

 林景一裁判長も自ら「(退職金は)社会経済情勢や経営状況の動向にも左右される」との補足意見を述べた。使用者側の事情に理解を示したようにもみえる。

 一方、原告の労働者が携わった業務については、正社員との共通部分を認めながらも、「相当に軽易」などと指摘。正社員への登用制度があったことも踏まえ、賞与や退職金の不支給を容認した。正社員との共通点よりも相違点を厳密に判断したとの印象を受ける。

 2件の訴訟は、ともに一審は原告敗訴だったが、二審では賞与や退職金の一部支払いを命じた。最高裁では再び原告の訴えが退けられたが、退職金を巡って反対意見が付いた。司法判断が揺れ動いたのは、この問題の捉え方の難しさを象徴していよう。

 非正規の待遇改善を企業に求める同一労働同一賃金制度は4月から大企業で始まった。

 厚生労働省は指針で、貢献度が同じ場合には正社員と同額の賞与を支払うなどの具体例を示すが、退職金には言及していない。

 そもそも、何を根拠に同一労働とみなすかは曖昧で、実効ある制度になっていないのが実情だ。

 全労働者の4割を占める非正規の平均賃金は、正規の3分の2にとどまる。コロナ禍では雇い止めや解雇が相次ぐ。使用者側の論理を重視しすぎれば、非正規労働者の処遇改善は遠のくばかりだ。

 厚労省は非正規の支援拡充に努めてほしい。使用者側も、賞与や退職金支給に関して合理的な説明ができる賃金体系づくりを急ぐ必要がある。