露骨なご機嫌取りというほかない。

 トランプ米大統領が、安倍晋三首相からノーベル平和賞の受賞候補に推薦されていたことを明らかにした。首相は否定せず、日本政府筋が事実関係を認めた。

 「米国第一」を唱え、国際協調に背を向ける言動が国際社会の批判を浴びていることを承知の上での判断だったのだろうか。日本の首相としての姿勢が問われよう。

 トランプ氏は記者会見で、安倍首相から平和賞に推薦した「最も美しい手紙」のコピーをもらったと語った。首相から「日本を代表して敬意を表し、あなたにノーベル平和賞が与えられるよう求めている」と伝えられたという。

 安倍首相は昨年6月の米朝首脳会談後、米政府から依頼され、ノーベル賞委員会へ推薦書簡を送付したようだ。推薦理由は、北朝鮮の非核化に向けた取り組みを評価したとみられる。

 トランプ氏が歴史的な米朝会談を実現させた点は評価できる。ところが朝鮮半島の非核化を巡る双方の認識に開きがあり、完全非核化への道筋は描けていない。

 トランプ氏は地球温暖化防止の枠組み「パリ協定」離脱を表明し、イラン核合意から撤退、中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄も通告するなど、その政治姿勢に国際的な批判は強い。ノーベル平和賞に値するのか疑問である。

 日米関係の重視は理解できる。平和賞受賞を望むトランプ氏の思いをくみ、したたかに「貸し」をつくるのも外交手段と割り切るべきとの指摘もある。とはいえ米国にこび、へつらう姿勢が国際社会にどう映るのか。トランプ氏の機嫌を損ねれば、日本は米国という「後ろ盾」を失いかねないとの不安感が透けるだけに情けない。

 安倍首相は、まさか推薦が表沙汰になるとは考えていなかったに違いない。ノーベル賞委員会が50年間、推薦者と被推薦者を公表しない方針を口実に「コメントは控えたい」と明言を避けた。だが「日本を代表」して推薦したのなら、トランプ氏をどう評価して推薦したのか、国民に説明すべきだ。

 2回目の米朝首脳会談が27、28両日にベトナムで開催される。核ミサイル問題も拉致問題も何ら解決していない。結果を出したいトランプ氏が中途半端に「取引」し、北朝鮮の核が温存されるような事態は避けねばならない。

 日本は対米追従に腐心するだけでなく、安易な妥協は許されないと、くぎを刺す必要がある。