日本学術会議の会員候補6人の任命拒否は、政府が理由を明らかにしないことが、問題となっているはずである。

 ところが、政府・自民党は、学術会議への年間約10億円の国費負担が妥当かどうか、検証作業を本格化させることにした。

 論点のすり替えだ、とする声が関係者や野党から上がるのは、当然である。

 自民党は、学術会議の在り方を検討するプロジェクトチーム(PT)の役員会を開いた。

 任命拒否についてPTは、政府が説明しているとして扱わず、国費の支出、組織の形態などの妥当性を検証する。

 学術会議を、政府の機関ではなく、民間の団体や非政府組織(NGO)とする案もあるようだ。提言を年内に取りまとめ、政府に出す予定だ。

 政府側は、河野太郎行政改革担当相が来月に、「行政事業レビュー」を行い、予算の執行状況と事務局の職員数をチェックする。

 また、井上信治科学技術担当相は、学術会議が、その役割を果たしているのか、調べる。

 政府と党の連携によって得られた結論は、来年度予算案に反映させたいとしている。

 これでは、任命拒否問題を解決しないまま、政府の対応に異を唱える組織の方を改変し、決着を図ることになりはしないか。まさに本末転倒といえよう。

 背景には、自民党内に学術会議への不満がたまっていることがあるという。

 3年前に会議は、軍事応用が可能な基礎研究に、政府が助成制度を設けたことを批判する声明を決定した。

 これに対して党内には、先端技術を巡って、軍民の区別がつきにくい状況があるため、声明は「時代遅れで、非常識だ」との指摘がある。

 ほかにも、会議が中国の学術団体と協力に向けた覚書を結んだとしたうえで、民間の研究を軍事に貢献させている中国と交流するのは声明の内容と「整合性が取れない」とする意見もある。

 こうした不満を受けて、任命拒否問題を機に、党にとって目障りともいえる会議の改廃に向けた思惑が、生じたのではないか。

 とはいえ、今回の対応については、筋違いだとする声が、党内にもあるそうだ。

 会議の在り方は、任命拒否の理由を先に明らかにしてから、堂々と検証すべきであろう。