日本が飽食のバブル経済の坂を上っていた1987年秋。フランス・パリのシャイヨ宮人権広場に全世界から10万人が集った。地上にはびこる飢餓や暴力に目を向け、「貧困は宿命ではない」と訴えた▼その10月17日こそ国連の定めた「貧困撲滅のための国際デー」だ。飢餓と貧困の解消は、2030年までに目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」の柱でもある▼だが、パリ集会後の努力で改善が続いてきた世界の貧困が、ここ数年で悪化に転じている。各地の紛争と干ばつなど異常気象が要因だ。さらに新型コロナウイルス流行が追い打ちとなり、飢餓状態が世界の3億人近くに倍増しかねないという▼そんな危機感が、今年のノーベル平和賞に食料支援活動を担う世界食糧計画(WFP)が選ばれた理由といえる。授賞理由で「飢餓と紛争は悪循環する関係にあり、平和に向けた環境を改善した」と評価した▼アフガニスタン復興に尽くした故中村哲医師の姿を重ねた人も少なくないだろう。紛争と干ばつで荒れた農地を復活させ、元難民ら65万人の生活を支えた。「大切なのは家族一緒に食べていけること」の言葉は重い▼WFPは、コロナ禍で喫緊の食料支援拡大のため国際協力の強化を呼び掛けている。食料こそ混乱を防ぐ最善のワクチンだ、と。