映画「あの日のオルガン」で園児と歩く保母役の戸田恵梨香。物語の舞台は埼玉の農村だが、この場面の撮影は亀岡市曽我部町法貴で行った

映画「あの日のオルガン」で園児と歩く保母役の戸田恵梨香。物語の舞台は埼玉の農村だが、この場面の撮影は亀岡市曽我部町法貴で行った

 京都と滋賀で99%撮影したという映画「あの日のオルガン」が22日から全国公開される。太平洋戦争末期、東京の未就学児を空襲から守るため、若い保母たちが奔走して集団疎開をさせた日本初の「疎開保育園」を描く物語。「子どもの命を未来につなぐ責任」を、今の時代に問い掛ける。戸田恵梨香(30)と大原櫻子(さくらこ)(23)が保母役で主演し、京都を中心に多くの幼児が園児役で出演した。監督・脚本は、京都で撮られた「たそがれ清兵衛」など山田洋次監督作品で助監督をしてきた平松恵美子(51)が務めた。=敬称略

 53人の幼児を連れ、東京から埼玉の農村へ集団疎開した保育園のドラマを、実話を基に描く。小学3~6年の学童の集団疎開は1944(昭和19)年から国の政策で進められたが、保育園の疎開制度はなかった当時。東京・戸越保育所の20代の保母が「子どもの命を守ろう」と奮闘する。

 なぜ関東の物語を京滋で撮ることになったのか。平松監督は「映画作りにおいても子どもたちのことを第一に考えました」と語る。

 出演した子どもは、4~6歳を中心に約30人。「これほど多くの幼児が出る映画は珍しく、毎日、撮影現場に家から通ってもらえることが第一条件でした」。東京ではビルや高圧電線が映り込み、田舎のロケ地まで毎日数時間かけて移動する必要がある。京都なら右京区太秦の撮影所を拠点にしながら、亀岡市や京丹波町など1時間ほどでロケができる場所が多くある。負担を考えると、京都を中心に、子どもたちをオーディションで選び、撮ることにしたという。

 撮影は昨年2~3月。太秦の松竹撮影所にある奉行所のセットを改造して疎開先となった寺の室内シーンを撮り、園児が遊び回る庭などの屋外シーンは亀岡市の丹波国分寺跡を中心に撮影した。このほか▽京丹波町の須知高の裏の林や旧質美保育所▽舞鶴市の松尾寺駅や大庄屋上野家▽米原市の伊吹山にあったセメント工場跡などで撮影した。「亀岡の国分寺跡は山田監督の『隠し剣(けん) 鬼(おに)の爪』でもロケで使わせてもらった。いい景色がやはり残っていますね」と平松監督。

 物語は、子どもがおねしょを頻発したり、村人に疎ましがられたりしながらも、保母たちが懸命に支える姿を追う。「無邪気な子どもの笑顔や寝顔は昔も今も変わらない。子どもの命を守るのが大人の責任。それを戦時中に上からの命令でなく、若い保母さんが自ら働きかけて、成し遂げた姿に光を当てたかった」

 大原演じる保母がオルガンを弾き、「雀(すずめ)の学校」などの童謡を園児が輪になって歌うシーンが象徴的に描かれる。「ただ食べて寝るだけでなく、幼い時だから育まれる心の潤いまで考えていた。虐待や待機児童など、子どもに関わる問題が解決されない現代にも通じるテーマがある」と信じる。

 京都市出身の田畑智子(38)や滋賀県出身の堀田真由(20)も出演。「パッチギ!」「フラガール」で知られる京都市出身の李鳳宇(リボンウ)(58)がエグセグティブ・プロデューサーを務めるなど、スタッフにも京滋関係者が多い。

 京滋ではMOVIX京都で22日から公開される。