欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」が迫り、日本メーカーの英国離れが加速している。

 ホンダが英国南部の工場での四輪車生産を2021年中に終了すると発表した。欧州での販売不振を要因に挙げるが、離脱問題が背景にあるとみるのが自然だ。

 従業員約3500人は解雇される方向という。英国経済と雇用に大きな打撃となる。

 英国に進出する日本企業は千社を超え、これまでEU諸国への輸出拠点となってきた。ホンダの発表は他企業の撤退の動きを後押ししかねない。

 3月29日の離脱まで40日を切っているが、英国内での議論は混迷を深めるばかりだ。政府と議会は企業からの警鐘と受け止め、一刻も早く展望を示すべきだ。

 英政府とEUが昨年11月にまとめた合意案は英下院が大差で否決した。代替案も批判を浴び、合意案の修正を余儀なくされた。

 その後も政府方針の拒否が続き、メイ首相は打つ手がない状態だ。現実的な選択肢は離脱日延期だが、「合意なき離脱」の可能性も高まっている。

 そうなった場合、EUへの乗用車の輸出には10%の関税がかかる。2月1日に発効した日本とEUの経済連携協定(EPA)では、日本からEUに輸出する際の関税は8年目にゼロとなる。

 グローバル企業にとって関税の影響は無視できない。すでに離脱に備えた動きは広がっている。日産自動車は現地での一部生産計画を白紙に戻し、トヨタ自動車は生産の一時停止を検討している。ソニーは家電の欧州統括会社をオランダに移す方針だ。

 日本以外でも独BMWが工場の休止を予定するなど多くの企業が対応策を進めている。

 英国の主権を取り戻すというEU離脱は、当初から「危険な賭け」だと言われた。危機はすでに現実になっているのではないか。

 それなのに混乱回避のための建設的な議論が一向に進まないのは問題だ。リスクを軽視していると批判されても仕方ないだろう。

 アイルランドとの国境管理問題が最大の焦点だが、国民投票を巡る感情的対立にとらわれ、冷静な議論が難しくなっているとされる。世界経済への責任を自覚し、現実に向き合うべきだ。

 危機感の欠如は日本政府にもいえるのではないか。事態の注視にとどまらず、企業への影響を最小限に抑えるよう、情報提供など積極的な支援策が求められる。