馬房内で職員に世話される引退競走馬(栗東市六地蔵)

馬房内で職員に世話される引退競走馬(栗東市六地蔵)

 午前9時。艶やかな青鹿毛のサラブレッドが朝の運動のため、職員に引かれて馬場へ姿を現した。ゆっくりと歩を進め、時折、あくびをしてリラックスした様子。馬房内ではごろんと寝転がる馬もいる。ファンファーレや大歓声に包まれる競馬場とは真逆の、穏やかな雰囲気が漂う。

 ここは、けがなどで引退して行き場を失った馬の緊急避難所・ホースシェルター。滋賀県栗東市に昨春開設された。運営する「日本サラブレッドコミュニティクラブ(TCCJapan)」は乗馬や馬の世話を通じて心身を癒やすホースセラピーとともに、引退馬の一時保護を行う。月4千円の一口オーナーを募り、一定数集まれば全国の牧場や乗馬クラブに預け、馬のセカンドキャリアを確保する。

 世話を担当する前川侑子さん(32)は「鍛えられているので闘争心が強いまま。かんだり蹴ったりする馬もいる。まずは信頼関係を作ることが第一」。指示に従ったときに目いっぱい褒めて、なでる。馬も次第に心を許し、すり寄ってくる。

 競馬界では毎年約6千頭が引退し、3~4歳で厩舎(きゅうしゃ)を出される馬も多い。だが繁殖用や乗用として余生を過ごすのは一握りだ。大半は「行方不明」になっている。山本高之代表(40)は「乗馬クラブなどに引き渡されたとしても、その後は行方を追えない」と明かす。山本代表によると、引退馬の多くは馬肉としてドッグフードなど動物用の餌のほか、食用にもなっているという。