昼休み中に教室で生徒に話しかける上窪教諭(大津市大将軍1丁目・瀬田北中)

昼休み中に教室で生徒に話しかける上窪教諭(大津市大将軍1丁目・瀬田北中)

 「嫌いなことに気づけよ」

 「嫌われてる」

 大津市の中学校の仲良しグループ数人が昨年、LINE(ライン)の自分のプロフィルに一斉に書き込んだ。誰のことが嫌いなのか。ぱっと見ても何のことか分からない。

 だが、グループの1人だけがプロフィルを更新しておらず、その子を標的としているのは明らかだった。急に仲間外れが起こったという。

 大津市の中学2年男子生徒が、いじめを苦にして自ら命を絶ってから7年4カ月。子どもにとって、いじめがそばにある状況は変わらないままだ。市によると昨年4~12月に市立の全小中学校55校で把握されたいじめ事案は3048件。いじめによる不登校もある。

 あの日、届かなかった訴えがあった。

 自殺した男子生徒が、学校の男子トイレで数人に囲まれ殴られていた。それを見た女子生徒が、教室の担任に「○○がやられている」と急いで伝えた。担任は取り合わなかった。教諭も学校も事態を把握せず、いじめはエスカレートした。「あのとき対応してくれていたら」。男子生徒の死後、女子生徒は語った。

 その反省に立ち、市は2013年から小中学校にいじめ対策担当教員を配置した。

 「1人で一生懸命何してるん」「昼休みは図書室に行かへんの」。瀬田北中(同市大将軍1丁目)の休み時間にいじめ対策担当教員の上窪華湖教諭(40)が、教室や廊下、保健室などで生徒に次々と話しかけた。下校時間帯には靴箱に行き、生徒の靴に何か入っていないかを点検した。

 昨秋、朝の教室にいた男子の表情が暗かった。仲の良い同級生に「うざい」「死ね」などと言われたという。放課後に相手の話も聞くと「仲良くしたいけど、うまくいかなくて…」。上窪教諭は「しゃべろか」と持ちかけ、担任も含め4人で30分間、お互いの気持ちを言い合い、仲直りした。「深刻化する前に防げた」と振り返る。

 生徒たちも一定の安心を感じている。「ちょっとしたトラブルでもすぐに先生に呼び出される。先生が常にいじめを気にかけている」(中2女子)。「親には話しにくくても相談できる先生がいる」(中3女子)

 一方、「いじめ担当の先生が誰なのか知らない」(中3女子)という声もある。市教育委員会によると、担当教員がいじめの芽を深刻にとらえず、不登校になった生徒もいたという。

 いじめ問題に関する研修などを行うNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の理事小森美登里さんは「いじめは社会に必ずある。ないはずがない」と断言する。小森さん自身も高校1年の娘をいじめによる自殺で失った。

 いじめが起こったとき、周囲の大人はどう向き合うべきか。小森さんは「まず事実確認」とした上で、加害者と一緒にどう責任を取るのか考える▽被害者からは希望を丁寧に聞き取る▽謝罪なのか、二度と加害者に会わないことなのか、その実現に向けて寄り添う-ことを挙げ、こう付け加えた。「大人が『いじめを絶対になくす』と思わないといけない」

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 11年10月11日、マンションの14階から13歳の少年は身を投げた。19日の大津地裁判決は、少年がいじめを苦に自死したと認めた。司法を動かした命の教訓はどう生かされているのか。教育現場を訪ねた。